
所有するマンションを不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」。マンション売買を検討する上で、買取の注意点はぜひ知っておきたいポイントです。取引をはじめる前に調べて、知らずに損してしまったと後悔しないようにしてください。
今回のコラムでは、マンション買取のメリットとデメリットについても紹介しています。また、不動産会社にマンションの買い手をみつけてもらう「仲介」との違いについても解説します。
マンション買取の14の注意点
「買取」はすぐに現金化しやすい点や、売却の際に関わるさまざまな手間が必要ない点など、メリットも多い取引形態です。しかし、マンション買取には気をつけるべき注意点も少なくありません。
この注意点をしっかり把握して、間違った判断によって損をしないようにしましょう。
- 仲介と買取の条件比較する
- リフォームは不要
- 相場観を持つ
- 2社以上で査定する
- 買取実績のある会社を選ぶ
- ローンの残債を確認
- 物件所在地・物件種類の売買が得意な会社に依頼する
- 引渡しの条件を確認する
- 中間省略の業者には気を付ける
- 資金規模の大きな会社を選ぶ
- リースバックも選択肢
- 仲介料や調査費などの報酬は発生しない
- 登記識別情報通知(権利書)は代金と引き換え
- 買取に付帯するサービスを確認する
仲介と買取の条件比較する
マンションを売却する方法として買取と仲介があり、金額など条件が異なります。
あとで後悔しないように検討しましょう。仲介の方が高く売れる可能性はありますが、いつ確実に売れるかわからないデメリットがあります。
物件の魅力にもよりますが、仲介で依頼をして成約にならない場合に、買取査定を依頼することがおすすめです。
リフォームは不要
買取業者は仕入れ後に、リノベーションやリフォームすることを予定しており、その分を仕入れ価格を安くしています。
売却にあたりリフォーム工事をしても、その査定額が高くなることありません。無駄なリフォーム工事はやめましょう。
相場観を持つ
ポータルサイト、自動査定などを活用して相場観を持ちましょう。情報弱者では、買取業者に安く買い取られてしまいます。
物件の売買において利害関係者同士となる、不動産会社を完全には信用してはいけません。相場を把握した上で交渉に臨み、価格交渉において不利な立場にならないようにしましょう。
2社以上で査定する
複数の会社に買取価格の査定を依頼することで、大きな損失を防ぐことができます。査定先は、自分自身で依頼する会社を探しても、一括査定サイトを利用しても、どちらでも構いません。複数の会社に査定を依頼することで、価格判断を間違えなくなるでしょう。
買取実績のある会社を選ぶ
買取できる資金力が不動産会社自体にあるのか確かめるために、仲介だけでなく買取実績を確認しましょう。
その会社の信用を知らずに、提示された価格だけで買取先を選んでしまうのは危険です。資金力がない会社の場合、売買は決まったものの売却先が見つからず、引き渡しができないという事態も想定できます。
ローンの残債を確認
マンションのローン残額が残った状態でも買取は可能です。しかし、ローンの返済計画が不透明な状態では、解約もしくは売買契約が見直しを迫られる可能性があります。
事前にローン返済計画を金融機関としっかり話し合い、今後のローン返済に問題がない状態で買取交渉に臨んでください。
物件所在地・物件種類の売買が得意な会社に依頼する
「関東地域に販売網を持つ」、「ワンルームマンションの売買実績が豊富」など、不動産業界でも住み分けが進んでいます。
所有する物件の属性に対して売買が得意な業者に依頼をすることで、より高値で販売できる可能性が高まります。不得意な物件を取り扱う業社は転売に不安があるので、どうしても厳しい査定になりがちなのが現実です。
引渡しの条件を確認する
残置物やエアコンなどの設備の引き渡し条件や、明け渡しの時期など、トラブルにならないように事前に綿密な打ち合わせをしましょう。契約締結前に必ず売買契約書を確認してください。
中間省略の業者には気を付ける
自社で買取する資金力がなく、転売成立後に入ってくる売却利益を当てにして契約をする業者がいます。
中間省略で登記をせずに転売をする不動産会社は、転売が決まらないと決済ができない場合もあり、注意が必要です。
資金規模の大きな会社を選ぶ
すぐに物件の買取ができる、資金に余裕がある会社を選びましょう。
その方が安心できる取引が実現し、高く買い取りしてもらえる可能性が高まります。
資金がなく契約後に買取が履行されない場合は、解約をするために手間と費用が発生します。
リースバックも選択肢
リースバックとは売却した物件に、買主と賃貸契約を結び家賃を払い住み続けることです。
住み続けることができ、まとまった資金を手にすることができる利点があります。
住み替えなどで資金を先に作り、じっくり購入物件を探すことができます。
仲介料や調査費などの報酬は発生しない
買取の場合は、仲介料や調査費など不動産会社に支払う報酬はないと理解してください。
悪質な会社は、仲介手数料を要求する会社も存在しますが、媒介契約を結んでいないので支払う必要はありません。
不当な請求する会社は信用ができないので取引を中止してください。
登記識別情報通知(権利書)は代金と引き換え
売買代金の入金と同時に、権利書等の登記移転書類を提供してください。
代金の受け取り前に、重要書類を渡してしまうと所有権移転だけされてしまい、支払われない危険があります。
買取詐欺を防止するために、司法書士の立会いの下に、売買代金と所有権移転書類は同時に引き換えにしてください。
なお、引渡し当日は、その場で入金を確認してから取引を終了させることがポイントです。
買取に付帯するサービスを確認する
残置物の撤去
売却する物件は残置物を撤去するのが原則ですが、自分で手配をして処分するのは費用が掛かり、日程の調整も面倒なものです。
マンション買取業者に、査定の段階で残置物の撤去の希望を伝えて対応可能か確認しておきましょう。
明け渡し日の柔軟な調整
買換えなどで、新居に移る前に売却物件の引渡し日が来てしまうこともあります。
買取会社によっては、残代金の支払いから数か月の引渡しを猶予するサービスを提供している会社もあります。契約前に対応が可能か確認をしてください。
プロが指摘する、マンション買取で注意すべき不動産会社の手口
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マンション買取のメリット
注意点も少なくないマンション買取ですが、その反面、まとまったお金がなるべく早く必要な人や極力取引の関する労力を省きたい人などにとって、買取は魅力的なメリットを数多く持っています。
手間がかからない
買主が不動産会社なので、契約日や引き渡しの期限、残置物などについて融通が効きます。ローン条項などもなしで確実に引き渡しができるので、手間がかかりません。
早期売却
買取の場合、最短3日長くても1ヵ月で、マンションの引き渡しが決まります。仲介と異なり市場から探す必要がないので、早期売却が可能です。
契約不適合責任を免責
売却後に物件の瑕疵が発見された場合、売買契約に適合していないと見なす「契約不適合責任」により、新しい買主は売主に対して、修繕費用や契約解除などを請求できます。
しかし、業社に買取を依頼した場合、契約不適合責任を免責する条件をつけて契約することが多いため、売却後の不安を減らすことができるでしょう。
内装工事がいらない
買取をした不動産会社が内装工事をおこなうため、現状のままでの部屋の受け渡しが可能です。設備不良でも問題ないため、追加の内装費用がかかりません。
仲介の場合、内装工事を実施しないと高く売れないこともあり、追加費用がかかることを覚悟しましょう。
近所に知られない
仲介で売買をするケースでは、現地販売会などで近隣住民に自宅を売り出していることを知られてしまいます。しかし、買取であれば不動産会社とのやり取りのみなので、秘密裏に進めることができます。いくらで売却をしたかを他人に知られることもありません。
手数料がかからない
仲介で売買が決まった場合、不動産会社に支払う仲介手数料が発生します。しかし、買取の場合では、その仲介手数料を支払う必要はありません。
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マンション買取のデメリット
マンション買取は、売却における取引がすべて不動産会社とのやり取りだけで完結するため、手間がかからず現金化も早い点がメリットです。しかし、売却に関わる労力が少ない分、金銭的なデメリットが発生します。
価格が安くなる
マンション買取の最大のデメリットは売却価格が安くなることです。仲介を通して市場の相場価格で売れた時に比べて、70~80%の価格になります。
不動産会社を見つけづらい
良い不動産会社を見つけることは、マンション買取を成功させる上で大きな助けになります。しかし、「資金力があり信用できる会社」や「売りたい物件の売却を得意とする会社」など、希望に合致する先を見つけることはなかなかの難題です。
査定価格から大きな値上げはない
業社側の買取希望価格は、業者側が転売したい価格帯からの逆算で決まります。仲介のように査定価格から大きく離れた価格で成約が決まることは少ないでしょう。値上げ交渉をしても値上げ幅には限界があります。
マンション買取で失敗しがちなオーナーの特徴

マンション買取と仲介の違い
|
買取 |
仲介 |
買主 |
不動産会社 |
一般ユーザー・不動産会社 |
取引形態 |
相対取引 |
市場取引 |
売却完了の期日 |
3日~1ヵ月 |
1~6ヵ月 |
費用 |
なし |
仲介料・内装費用 |
価格 |
相場の70~80% |
相場価格で上下 |
売却確率 |
確実 |
不確定 |
買取と同じく、不動産会社が間を取り持つことによって売却が決まる「仲介」。不動産投資初心者には、買取と仲介の詳しい違いがわかりづらいかもしれません。
買取対象が不動産会社のみで、売主と買主が直接契約を交わす「相対取引」の買取に対して、仲介の場合は、一般ユーザーと不動産会社の両方を買取対象とし、市場で流動的に価格が決まる「市場取引」で売買取引をします。
また、買取は売却までの完了までの日数が平均して、3日〜1ヶ月と短く、売買に関わる諸々の手数料が必要ないものの相場の価格に対して、70〜80%の売却価格になってしまいます。対して、仲介では、取引成約まで1〜6ヶ月と長期間になることも多く、なおかつ成約に至らない可能性があります。しかし、仲介の場合、仲介料や内装費用など追加の費用がかかるものの、相場によって価格が上下するので、より高値で販売できる可能性もあります。
買取、仲介どちらを選ぶにしても一長一短があるので、より自分に合った取引方法を選んでください。
マンション買取で注意するべき事例
マンション買取での具体的な事例を確認することで、自分自身の立場と照らし合わせながら注意点を確認しましょう。
自宅戸建てを新築で購入。生活していたマンションを売却することにしたAさん
Aさんは買取保証付きの媒介を勧められ、大手の不動産会社と媒介契約を締結しました。媒介契約を結んだ当初、熱心に買取を提案してきた不動産会社に対して、仲介の方が高く売却できると思うAさんは、仲介での販売を粘り強く主張していました。しかし、何時までたっても売却先が決まらない状況に業を煮やし、最終的に買取で売ることにしました。
今にして思えば、不動産会社側は仲介での販売をはじめから本気で営業するつもりはなく、買取ができる価格に下がるまで時間を稼ぎ、私が買取に心変わりするのを待つ作戦だったと感じています。Aさんは明確な売却戦略を持ち、それを指針に活動を進めるべきだったと後悔するばかりです。
Aさんの例では、「最初の3ヶ月は仲介で営業、その期間に決まらない場合は買取に変更する」というように、しっかりとした戦略を持って活動しなかったことが、後々の後悔に繋がっています。また仲介、買取、どちらの場合でも、複数の会社の話を聞いて比較、決定をしないと、情報不足のために損することにないがちです。
中間省略の業者に買取契約をするも、引き渡しができないBさん。
複数の会社に査定を依頼したBさん。検討の結果、価格が一番高い地元の小規模な不動産会社に依頼することにしました。契約の条件に中間省略の特約がありましたが、担当者に確認すると「資金があるので問題がない」と回答がありました。
しかし、引渡しの期日になっても物件の引渡しができなかったため、引渡しの期日を2ヶ月間延長することに。結局、2ヶ月待っても不動産会社は買取資金の用意ができず、Bさんは買取契約の解約を要求しました。不動産会社は、「解約には応じるが違約金は払う気はない」という対応をしてきたため、仕方なく弁護士を立てて違約金を請求することになりました。
価格だけで買取業者を決めてしまったことで、大きな負担が必要になったと後悔しています。
売却価格は下がってしまっても、早期の現金化や煩雑な不動産取引の手間を省きたい人にとって、買取は魅力的な売却手段です。相場観など不動産についてしっかり勉強をして、信頼できる不動産会社に買取を依頼できれば、失敗する可能性も極力少なくできるでしょう。
「自分は買取と仲介どちらが適切か」などマンション売却にお悩みの方は、不動産売却の経験豊富な専門会社に相談することをおすすめします。
”買取保証”は良い制度?

代表取締役伊藤幸弘
まず気をつけなきゃいけないのは、三為と呼ばれる業者ですね。細かい説明は省きますが、物件を買い取ると言っておきながら、実際には資金が用意できなくて、いつまでたっても売却できないというケースがあるんです。また、相場よりもかなり安い価格で売主にとって不当な価格で買い取る業者も存在します。
こういった会社の共通点は、情報を全くオープンにしないことです。ホームページを見てもろくな情報がない。従業員の紹介や会社の概要などに詳しいことが書かれていない。こういった会社は、うまくいかなかったらすぐ会社潰して次の会社作るといった業者に多いんです。
マンションを買取で売却する場合でも複数社に相見積もりを取るべきです。全ての会社が同じ値段で買い取るわけじゃないですからね。むしろ買い取りの方が、複数社に相談してしっかり調べた方がいいでしょう。