不動産投資において、非常に重要なのが出口戦略をどのように定めるかということです。今回は出口戦略の考え方や成功事例、失敗時の対処法について解説します。
購入時から出口戦略を意識しておきましょう。物件選定や収支シミュレーションに大きく影響が出ます。
不動産投資、売り時はいつ?
相場価格が上昇傾向である
当然のことながら、不動産の相場価格が高いときに売却をすれば利益が増大します。好景気で金利が低く設定され、取引件数が増加していれば、相場価格も上昇する傾向にあります。このようなタイミングを逃さずに物件を売却することが大切です。
満室経営ができている
所有する物件の賃貸経営が順調であれば、利回りが良いと見なされ、売却価格も高くなる傾向があります。逆に空室が多ければ買い手は収益性を慎重に判断することになり、売却価格は上がりづらくなります。
大規模修繕工事の前
大規模な修繕工事は定期的に実施する必要が生じ、そのたびにまとまった額の支出が必要となります。しかし、負担した修繕費用をそのまま売却価格に上乗せできるわけではありません。このような工事より前に売却をするのも1つの方法です。
ローン残金よりも売却価格の方が高い
原則として、ローン残金よりも売却価格の方が高いうちに売却するべきです。逆に、ローン残金よりも低い価格でしか売れない場合、その差額を用意しなければなりません。
減価償却の終了時
建物の減価償却期間が終わると、経費として計上できる項目・金額が少なくなり、確定申告時の納税額が増えることになります。このため、減価償却が終わった時点で買い替えを検討する人も多いのです。
デッドクロスに陥る前に
不動産投資のデッドクロスとは、「減価償却費よりも借入金(ローン)の元本返済額の方が高い状態」のことを指します。減価償却費は、建物資産を減らすために、実際には支出を伴わないものの帳簿上に経費として計上される費用です。利益を小さくすることになるため、節税効果のある項目です。一方でローンの元本返済額には節税効果はありません。デッドクロスになると、資金繰りが悪化します。場合によっては、帳簿上は利益が出ているのに、キャッシュフローがマイナスとなることもあるのです。このような状態となる前に売却を判断する人も多くいます。
所有期間が5年を経過したタイミング
所有期間が5年以上となると長期譲渡所得と見なされ、短期譲渡所得よりも税金が安くなります。売却益が出ると課税対象となるため、売却を判断する際の指針のひとつとして覚えておきましょう。
不動産投資における出口戦略の考え方
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投資不動産を売却する方法
オーナーチェンジ
入居者が居住した状態のまま、物件を売買する方法を「オーナーチェンジ」といいます。売り手は、入居者の退去のタイミングを待つ必要がないこと、買い手は購入後すぐに家賃が得られることなどがメリットです。
更地にして売却
アパートなどの一棟物の場合に限られる方法ですが、収益が悪い状態の場合に、更地にして住宅地にした方が資産価値が高くなることがあります。ただし、入居者がいる場合は立ち退きの交渉や費用がかかる可能性があります。
売買仲介を依頼
不動産会社に仲介を依頼します。契約の形態は大きく分けて3種類です。
専任媒介契約
不動産会社1社のみと契約をする形態です。ただし、自力で書いてを見つけた場合は、不動産会社を介することなく契約できます。契約の有効期間は最大3ヶ月です。
専属専任媒介契約
専任媒介契約と同様、不動産会社1社のみと契約を交わします。専属専任媒介契約の場合、不動産会社が見つけた買い手としか取引ができない点が異なります。契約の有効期間は、こちらも最大3ヶ月となっています。
一般媒介契約
複数の不動産会社と同時に契約できる携帯です。自力で探した買い手と不動産会社を介することなく契約することも可能です。
業者買取
不動産業者であれば、購入した物件にリノベーションを施したり、入居者の退去後には更地にして販売をしたり、といった事業展開も可能であるため、収益性よりも資産価値を重視して買取価格を査定してもらえる可能性も高まります。
直接個人間で売買契約を交わす
仲介手数料等がかからないといったメリットはありますが、法律などの専門知識がなければリスクの高い方法です。身内など、信頼関係ができている相手でなければ難しいかもしれません。
不動産投資の売却で気をつけたいポイント
2社以上で査定する
1社のみでの査定では、適正な価格であるかの判断ができません。査定は方法によって大きく金額が異なることも多いため、必ず複数の会社に依頼しましょう。
専門性の高い投資会社に依頼する
たとえばオーナーチェンジで物件を売却する場合は、売買実績などをチェックして、専門性が高い会社に依頼しましょう。適正な査定を期待できるほか、手続きも円滑に進められる可能性が高まります。
ローンの残金を確認する
売却をする前に、必ず現在のローンの残金を確認しておきましょう。売却の話が進んでから「ローンの返済資金が足りない!」といった事態になると、関係者に大きな迷惑をかけることになります。
ゆとりのある売却期間を設定する
物件の買い替えを行う場合や、売却資金を使う予定がある場合などは、ゆとりのある売却期間を想定してスケジュールを立てましょう。売出から引き渡しまで、少なくとも3ヶ月程度かかります。6ヶ月以上と長期化することもあるため、ギリギリのスケジュールでは、その後の予定に支障が出てしまいます。
売出価格は少し高めに設定する
投資不動産を売却する場合、買い手から必ず価格交渉を持ちかけられると想定しておくべきです。これに備えて、査定価格よりも少し高めに売出価格を設定することがポイントです。投資不動産の場合、買い手も投資家であるため、厳しい目で価格を判断します。
諸経費・税金のシミュレーションを実施する
思わぬ出費で想定していた利益額よりも少なくなってしまった、ということのないよう、もろもろの費用をしっかりシミュレーションしておきましょう。仲介料は不動産会社に試算してもらうよう依頼します。税金は複雑なので、税務署や税理士に確認をお願いしましょう。
無駄なリフォームはしない
修繕リフォームをした方が売却価格は高くなると考える人が多いのですが、実はそれほど売却価格は上がりません。それどころか、リフォームにかけた費用を回収できない程度にしか値上がりしないことも多いのです。
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不動産投資を成功に導く出口戦略とは
キャッシュフローがプラスになる経営を実現する
毎年のキャッシュフローがプラスになるよう、運用の計画を立てましょう。キャッシュフローがプラスになり、資金に余裕が生まれてはじめて、出口戦略は機能します。
価格が下がりづらい物件を購入する
物件の購入時には、都心・駅地下・人口増エリアなど、価格が下がりづらい条件を満たしているかをしっかりチェックしましょう。また、築年数が経過している物件も価格が大きく下落することもないため、出口戦略を立てやすいと言えるでしょう。
安価で購入する
物件の購入時には、相場よりも安く購入することを心がけましょう。そのためには常に物件情報の収集を行い、良い物件を見逃さないことも大切です。逆に、条件の悪い物件に手を出さないためにも情報収集は重要です。
融資が組みやすい物件を購入する
融資に関して注意したいのが、「売却時に買主が融資を組みやすいか」という視点で物件を評価することです。再建築ができない、違法な増築がある、といった物件は、融資を組むことができないため買主が限られてしまいます。必然的に売却価格も上がりにくくなります。
購入時に売却の時期と価格を見据えておく
購入の時点で、出口戦略を具体的に立てておくことが大切です。どの程度の価格で、何年目に売却すれば利益が出るか、その価格で売却できる条件の揃った物件かを冷静に判断しましょう。
良い不動産会社を見つける
知識が乏しい状態では、有効な出口戦略を策定することは困難です。投資のプロである不動産会社は、有益なアドバイスや情報を提供し、より充実した出口戦略の策定をサポートしてくれます。良い不動産会社をパートナーにすることは、不動産投資を成功に導くうえで最も重要な要素といっても過言ではありません。
成功する出口戦略の考え方
不動産投資の出口戦略、失敗時の対処法
当初立てた出口戦略ではうまくいきそうにないことが明らかになった場合は、ローンを完済するまで所有するという方針に切り替えることも選択肢のひとつです。家賃収入が支出を上回る状態であれば、ローン完済まで待つことを検討しましょう。また、収支がマイナスになっている場合は繰り上げ返済をして収支を改善します。完済後は、家賃がそのまま収入となります。
成功事例に見る優れた出口戦略
都心の一等地のワンルーム
都心の一等地に、築30年のワンルームを購入したAさん。バブル崩壊後に底値で購入したこともあり、売却時(10年後を想定)にも同等以上の価格で売却できるだろうと当時から考えていました。予定どおり購入の10年後に売却をしたときには、相場価格が35%上昇しており大きな利益を得ることができました。Aさんの投資が成功したのは、購入時に底値であることを見抜き、10年後の売却に向けて確度の高い出口戦略を描けたから、と言えるでしょう。
築古のアパート
郊外の物件を購入したBさん。築古物件だったため、長期的に保有するのではなく、ある程度の年数が経過した時点で空室を待って更地にする、という出口戦略を立てました。定期借家契約で募集するなど、空室にできるよう工夫を重ね、購入から10年で入居者がすべて退去しました。当初予定どおり更地にして売却することで、10年間の家賃収入以上の転売益を確定できました。手間はかかりましたが、しっかりした出口戦略を立てたことで、大きなリターンを得られた事例です。
ミクロとマクロな視点で見る出口戦略・売りどきの考え方
代表取締役伊藤幸弘
出口戦略は、投資物件を買った瞬間から考えるべき戦略です。買う時、もういつ出口を迎えるかなっていうのは考えておかないといけません。私が物件を買うときは、この物件はあと5年経ったら、10年経ったらいくらの家賃で、いくらぐらいで売れるのかなっていうのを見ます。
どうやって見るかというと、例えば築年数が10年の物件を買うとなったら、築15年、築20年の物件が同じエリアでどれぐらいで売買されてるのかをポータルサイトなどで確認します。そうすれば今の時点でも、10年経過したらこれぐらいの金額なのか、これぐらいの家賃なんだなっていう感覚をなんとなく掴むことができます。
出口戦略というのは、どちらかというと”守り”の戦略です。資産を減らさないように、なるべく残存価値を保った状態で売っていく。時期を見計らって資産価値を減らさないように売る。キャピタルゲインとは違って、出口戦略はいつ売れば損しないかを考えるものです。
個人の不動産投資家はあまりキャピタルゲインを意識して投資をしない方がいいでしょう。キャピタルゲインを得るには不動産会社がライバルになります。不動産会社より安く買って、不動産会社より高く売るってのはなかなか難しいと思います。
出口戦略は、出口までちゃんと家賃が取れるかとか、そういうことも考えます。インカムゲインだけじゃないし、キャピタルゲインだけでもない、トータルゲインなんですよね、
実際の事例で言うと、例えば10年後に売却することを想定して物件を購入したとします。その時、今後10年間の家賃収入の予測、物件の価値の変動、さらには大規模修繕のタイミングなども考慮に入れます。例えば、8年目に大規模修繕が予定されているなら、その前に売却するか、修繕後に価値が上がるのを待つか、そういった判断も出口戦略の一部になるわけです。