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自主管理のマンションは売れない!?リスクと対処法とは

自主管理マンションは売れない

自主管理マンションは、一見すると管理費用が安く、住民の意思が反映されやすいと思われがちです。しかし、実際には様々な課題を抱えており、売却時に困難に直面することもあります。

自主管理マンションのメリットとデメリット、そして管理委託への移行について詳しく解説します。
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自主管理マンションのメリットとデメリット

自主管理マンションとは、管理会社に委託せず、住民自らがマンションの管理を行う形態です。一般的な管理委託型のマンションとは異なった特徴があります。自主管理マンションのメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット

自主管理マンションには、以下のようなメリットがあります。これらは、住民主体の管理だからこそ得られる利点といえるでしょう。

管理費用の削減

自主管理の最大のメリットは、管理費用の大幅な削減です。管理会社に委託する場合、月々の管理費や委託費用が発生しますが、自主管理ではこれらの費用を抑えることができます。住民が直接管理業務を担当するため、外部への支払いが少なくなり、結果として各世帯の負担が軽減されます。

数十戸規模のマンションで、管理会社に委託した場合と自主管理を比較すると、年間で数百万円の差が出ることも珍しくありません。この削減された費用を、修繕積立金に回したり、共用部分の設備更新に充てたりすることで、マンションの価値維持にもつながる可能性があります。

住民の意識向上

自主管理を行うことで、マンションの管理に対する住民の意識が大きく向上します。各居住者が管理に携わることで、建物や共用部分の維持管理に対する関心が高まり、自分たちの財産を自分たちで守るという意識が醸成されます。

この意識の高まりは、単にマンションの物理的な管理だけでなく、コミュニティの形成にも良い影響を与えます。たとえば、清掃活動や植栽の手入れなどを住民が協力して行うことで、住民同士の交流が深まり、より良好な住環境が形成されていくのです。

柔軟な管理運営

管理会社に縛られることなく、マンションの特性や住民のニーズに合わせた柔軟な管理運営が可能になります。修繕のタイミングや費用配分、共用部分の利用規則などを、居住者の意向を反映させやすくなります。

たとえば、エレベーターの保守点検の頻度を住民の要望に応じて調整したり、駐車場の利用ルールを柔軟に変更したりすることができます。また、緊急を要する修繕や設備の更新なども、住民の合意さえ得られれば迅速に対応することが可能です。

このような柔軟性は、マンションの価値を維持し、居住者の満足度を高める上で大きな利点となります。

デメリット

一方で、自主管理マンションには以下のようなデメリットも存在します。これらは、マンションを売却する際の障壁になる可能性もあるため、十分な注意が必要です。

専門知識の不足

マンション管理には、法律、会計、建築など多岐にわたる専門知識が必要です。自主管理の場合、これらの専門知識を持つ人材が不足しがちで、適切な管理が難しくなる可能性があります。

建築基準法や消防法などの法令遵守、適切な修繕計画の策定、会計処理の適正化など、専門的な知識が要求される場面が多々あります。これらの知識が不足していると、法令違反や不適切な修繕、会計トラブルなどのリスクが高まります。

また、マンションの経年劣化に伴う大規模修繕工事の計画立案や実施においても、専門的な知識が不可欠です。適切な時期に必要な修繕を行わないと、建物の劣化が進み、資産価値の低下につながる恐れがあります。

管理の負担増

管理業務を住民が担うため、個々の負担が増加します。特に、理事会メンバーや管理組合役員の負担は大きくなります。日常的な管理業務に加え、トラブル対応や各種書類の作成、総会の運営など、多岐にわたる業務をこなす必要があります。

この負担増は、仕事や私生活との両立を困難にし、長期的な管理体制の維持を難しくする要因となります。特に、高齢化が進むマンションでは、管理業務を担える人材の確保が課題となることがあります。

また、管理業務の負担が特定の住民に集中すると、不公平感が生まれ、住民間の軋轢を引き起こす可能性もあります。このような状況は、マンション全体の雰囲気を悪化させ、結果として資産価値の低下につながる恐れがあります。

トラブル対応の困難さ

居住者間のトラブルや、設備の故障など突発的な問題への対応が難しくなります。専門的な知識や経験が不足している場合、適切な対応ができず、問題が長期化・深刻化するリスクがあります。

水漏れや騒音問題などの居住者間トラブルが発生した場合、中立的な立場で適切に調停することが求められますが、素人では対応が難しいケースも多々あります。また、エレベーターの故障や給水設備の不具合など、専門的な知識を要する問題が発生した際も、迅速かつ適切な対応が困難になる可能性があります。

このようなトラブル対応の遅れや不適切な対応は、居住者の不満を高め、マンション全体の評判を落とすことにつながります。結果として、物件の魅力が低下し、売却時の障害となる可能性があります。

自主管理のマンションが売れない理由やリスクとは

自主管理マンションがなぜ売却できないといわれているのか、その理由やリスクについて紹介します。

管理組合が機能していない

建物管理会社と契約をせず、自主管理となっている物件の場合、管理組合が機能しているかどうかが鍵となります。これが機能していない場合、将来的な維持管理や清掃のあり方などについて、意思決定をされていないケースが多いようです。修繕などを実施しようにも意思決定ができないため、最低限のメンテナンスを行うのがやっと、という物件もあります。マンション所有者の協力が得られず、トラブルが生じている場合もあるようです。

長期修繕計画が策定されておらず積立金も少ない

将来の維持管理や大規模修繕のプランを定めた、長期修繕計画が策定されていない物件もあります。また、計画自体は策定されていても、管理組合が機能していない場合には、月々の修繕積立金の値上げなどの合意を取ることができません。積立金が不足することが明らかであっても、必要な額を用意することができないため、マンションを適切な状態に維持管理できないのです。

管理状態が悪い

管理会社に委託をしない自主管理マンションでは、住民や不動産会社が清掃管理を行っているケースもあります。管理会社にすべての業務に委託するケースと比べると、やはり専門性やノウハウ等が乏しいことから、業務品質が下がる場合が多いようです。十分な清掃作業などが行われなければ、物件の管理状態はどんどん悪くなっていきます。マンションの外観が劣化したり、設備の機能が低下したりするリスクも回避できません。そうなれば資産価値は下がり、売却価格の下落や売却そのものが難しくなることもあります。

ローンが組みづらい

金融機関が自主管理のマンションを取り扱わないことが多い点も、売りづらさの要因となっています。ローンが組みづらい物件では、リセールバリューの観点から資産価値が低下するため、買い手がなかなか見つかりません。

管理組合の機能不全、長期修繕計画の不在といったこれまで挙げてきた要因は、買い手にとってはリスクとなります。このため、購入の選択肢から外れてしまうことが多いのです。

自主管理のマンションが売れない場合の対処法

上記したように、売却しにくいといわれている自主管理マンションですが、売却するためにはどのような対処法があるのでしょうか。

業者買取

マンションの管理状態が悪くても、価格次第で買い取ってくれる不動産業者もあります。不動産のプロであれば、リノベーション再販や投資用などといった方法を採れる可能性があるため、一般のユーザーよりも取引が成立する見込みがあるといえるでしょう。売却が難航している場合は、不動産業者に相談してみると良いでしょう。

オーナーチェンジで販売する

居住用として空室の状態で販売するのではなく、投資用物件として賃貸に出し、入居者がいる状態でオーナーチェンジをするという方法もあります。仮に売却ができない場合でも、入居者がいれば家賃収入を得ることができます。空室のままにしておくより、有効に物件を活用することができます。

建物管理会社と契約する

管理組合の決議をとり、今からでも管理会社に全部委託するのも選択肢です。費用や時間はかかりますが、これまで見てきたような自主管理のデメリットを解消することができ、長期的に見れば多くのメリットがあるといえるでしょう。マンションの管理状態を改善し、将来的な修繕の計画を策定することができれば、資産価値が向上し、買い手も見つかりやすくなるはずです。

同じマンションのオーナーに売却する

隣人であれば、マンションの管理状態についてはすでによく理解しています。こうした相手に売却をすることを検討しても良いかもしれません。自主管理のマンションは前述のとおりローンが組みづらいため、現金で購入できる買い手に限られてしまう場合はありますが、市場で売却するよりも高値で売れる可能性もあります。

高値売却ができる理由とは?

自主管理になってしまうマンションの特徴

様々な理由で、自主管理となってしまうマンションがあります。自主管理となるマンションの特徴について紹介します。

築年数が経過しており総戸数が少ない

築年数が経過している小規模なマンションの場合、将来的に建て替えるつもりなどもなく、住民も含めて長期的な修繕に関心がないこともあります。相続する予定もないため、資産価値を向上させるために、修繕や管理などをしっかりと行おうというモチベーションがありません。こうした物件では、管理会社と契約することもなく、自主管理となるケースも多いのです。

等価交換により取得された物件

地権者が等価交換方式により建物の所有権を得る場合、自主管理となるケースもあるようです。入居者がもともと知り合いであることが多いので、管理組合のような形態を取らずに運営されている場合もあります。管理についても、建物管理会社に委託せず、自主管理となるパターンが多いようです。

建物管理会社との契約が終了してしまった

もともとは建物管理会社に管理を委託していた物件だったものの、その管理会社倒産してしまった、というケースもあります。その後、別の建物管理会社を探して契約せず、自主管理となった、というパターンです。

自主管理から管理委託への移行も検討する

自主管理のデメリットが目立つようになってきた場合、管理委託への移行を検討することも一つの選択肢です。管理委託とは、専門の管理会社にマンションの管理業務を委託する方式です。管理委託のメリット、管理会社の選び方、そして移行のタイミングと手順について詳しく見ていきましょう。

管理委託のメリット

管理委託には、自主管理のデメリットを解消できる多くのメリットがあります。以下に主なメリットを挙げていきます。

専門知識を持つ人材による適切な管理

管理会社には、法律、会計、建築などの専門知識を持つスタッフが在籍しているため、適切かつ効率的な管理が期待できます。法改正への対応や、適切な修繕計画の策定、会計処理の適正化などを、専門家のサポートを受けながら進めることができます。

24時間対応可能な緊急時のサポート

突発的な設備の故障や事故が発生した場合でも、管理会社の緊急対応サービスを利用することで、迅速な対応が可能になります。これにより、居住者の安全と快適性が向上し、マンションの評価にもプラスの影響を与えます。

法律改正や新しい管理体制への対応

管理会社は常に最新の情報を入手し、それをマンション管理に反映させることができます。これにより、常に適切な管理状態を維持することが可能になります。

あわせて、管理組合役員の負担が大幅に軽減されます。日常的な管理業務や各種書類の作成、トラブル対応などを管理会社が担当するため、役員の負担が減少します。これにより、役員のなり手不足の問題も解消される可能性があります。

金融機関からの評価が上がる

金融機関からの信頼性が向上し、購入者のローンが組みやすくなる点も大きなメリットです。管理委託されているマンションは、適切に管理されているという評価を受けやすく、金融機関からの融資を受けやすくなります。これは、将来的な売却や購入者の確保という面でも有利に働きます。

管理会社の選び方

管理委託を検討する際、適切な管理会社を選ぶことが非常に重要です。以下に、管理会社選びのポイントを詳しく解説します。

まず、実績と評判を確認することが大切です。管理会社の管理物件数、さらには同規模・同年代のマンションの管理実績などを確認しましょう。また、他のマンションの管理組合や居住者からの評判も可能な限り調べるとよいでしょう。インターネットの口コミサイトや、不動産関連の情報サイトなども参考になります。

次に、提供サービスの内容と質を比較することが重要です。基本的な管理業務(会計、清掃、設備管理など)に加え、どのような付加価値サービスを提供しているかを確認しましょう。たとえば、防災対策や省エネ対策、コミュニティ形成支援などのサービスがあれば、マンションの価値向上につながる可能性があります。

管理費用の透明性と妥当性も重要な選定基準です。見積もりの内訳を詳細に確認し、各項目の費用が適正かどうかを判断しましょう。また、将来的な値上げの可能性についても確認しておくとよいでしょう。ただし、単に安いだけでなく、サービスの質とのバランスを考慮することが大切です。

コミュニケーション能力と対応の迅速さも評価すべきポイントです。管理組合や居住者との円滑なコミュニケーションが図れるか、問い合わせや要望に対して迅速に対応できるかを確認しましょう。これらは、日々の管理業務を円滑に進める上で非常に重要な要素です。

最後に、管理組合との協力体制を重視することも大切です。管理会社に全てを任せきりにするのではなく、管理組合と協力して管理を行う姿勢があるかどうかを確認しましょう。例えば、定期的な報告会の開催や、管理組合の意思決定をサポートする体制があるかなどを確認するとよいでしょう。

移行のタイミングと手順

自主管理から管理委託への移行を検討する際、そのタイミングと具体的な手順を理解しておくことが重要です。以下に、移行のプロセスを詳しく解説します。

1. 管理委託の必要性の検討

まず、管理組合で管理委託の必要性を議論し、合意を形成することから始めます。自主管理の課題や問題点を洗い出し、管理委託のメリットと比較しながら、移行の是非を検討します。この段階で、居住者全体の意見を広く聞くことが大切です。たとえば、アンケート調査を実施したり、説明会を開催したりするのも効果的です。

2. 管理会社の選定

次に、複数の管理会社から見積もりを取り、比較検討します。前述の「管理会社の選び方」で挙げたポイントを踏まえ、各社の提案内容を詳細に比較します。この際、単に価格だけでなく、サービスの質や管理体制なども含めて総合的に判断することが重要です。また、必要に応じて管理会社のプレゼンテーションを受けるのも良いでしょう。

3. 総会での決議

続いて、管理組合総会で管理委託への移行を決議します。管理委託への移行は、マンションの運営方針に関わる重要事項であるため、管理組合の規約に基づいて、総会での決議が必要となります(一般的には、普通決議:出席者の過半数で承認されます)。この際、移行の理由や選定した管理会社の詳細、予想される管理費の変動などについて、丁寧に説明することが大切です。

4. 契約締結

総会での承認が得られたら、選定した管理会社と契約を締結します。契約内容を慎重に確認し、必要に応じて法律の専門家にも相談しながら進めることが重要です。契約書には、委託する業務の範囲、管理費用、契約期間、解約条件などの重要事項が明確に記載されているか確認しましょう。

5. 業務の引き継ぎ

最後に、管理業務の引き継ぎを行い、スムーズな移行を図ります。これには一定の期間を要するため、計画的に進める必要があります。具体的には、以下のような作業が必要となります。

  1. 管理組合の書類や財務資料の引き継ぎ
  2. 建物や設備の図面、修繕履歴などの技術資料の引き継ぎ
  3. 鍵や備品の引き継ぎ
  4. 居住者情報の引き継ぎ(個人情報保護に十分注意)
  5. 管理事務室や管理用備品の準備
  6. 新しい管理体制の居住者への周知

この引き継ぎ期間中は、管理組合と新旧の管理主体(自主管理の担当者と新しい管理会社)が密に連携を取り、情報の漏れや齟齬がないよう注意する必要があります。

6. 移行後の対応

また、移行後も定期的に管理状況を確認し、必要に応じて管理会社と協議しながら改善を図っていくことが大切です。管理委託はゴールではなく、より良いマンション管理を実現するためのスタートラインだと考えるべきでしょう。

管理委託移行の意義と注意点

自主管理から管理委託への移行は、マンションの資産価値を維持・向上させる重要な選択肢の一つです。売却を考えている場合も、管理委託への移行を検討することで、物件の魅力を高め、売却しやすくなる可能性があります。

ただし、管理委託への移行は万能の解決策ではありません。管理委託後も、管理組合が主体的に管理会社と協力しながらマンション管理に関与していくことが重要です。例えば、定期的な管理状況の確認や、中長期的な修繕計画の策定、コミュニティ形成の取り組みなどは、管理組合が中心となって進めていく必要があります。

また、管理委託への移行にあたっては、居住者全体の理解と協力が不可欠です。移行の検討段階から、情報を透明化し、十分な説明を行うことで、スムーズな移行と新しい管理体制の定着が期待できます。

総合的なマンション価値向上策

自主管理マンションの売却困難という問題は、単に管理形態だけでなく、建物の維持管理状態や修繕積立金の状況、コミュニティの活性化度合いなど、様々な要因が複合的に影響しています。したがって、管理委託への移行を検討する際には、これらの要因を総合的に評価し、マンション全体の価値向上につながる方策を考えることが重要です。

たとえば、管理委託への移行と同時に、以下のような取り組みを行うことで、マンションの魅力を高め、売却しやすい環境を整えることができるでしょう。

  • 長期修繕計画の見直しと適切な修繕積立金の設定
  • 共用部分の美化や設備の更新
  • 防犯・防災対策の強化
  • 省エネ設備の導入によるランニングコストの削減
  • コミュニティ活性化のためのイベントや取り組みの実施

これらの取り組みを通じて、マンション全体の価値を高めていくことが、自主管理マンションの売却困難という問題の根本的な解決につながるのです。

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コラム監修

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伊藤幸弘  

資格

宅地建物取引主任者・賃貸不動産経営管理士・FP技能士・公認 不動産コンサルティングマスター・投資不動産取引士・競売不動産取扱主任者・日本不動産仲裁機構ADR調停人

書籍

『投資ワンルームマンションをはじめて売却する方に必ず読んでほしい成功法則』


『マンション投資IQアップの法則 ~なんとなく投資用マンションを所有している君へ~』

プロフィール

2002年から中古投資マンションを専門に取引を行う。
2014年より株式会社TOCHU(とうちゅう)を設立し現在にいたる。

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