不動産投資
アパート経営が地獄と呼ばれる理由を解説。窮地に陥らないアパート経営のポイント
インターネットでアパート経営について調べていると「アパート経営は地獄」といった言葉が表示されたり、アパート経営はやめておけといった論調のページがヒットしたりします。
なぜ、アパート経営は地獄であるといわれているのでしょうか。アパート経営におけるリスクと未然に防ぐためのポイント、地獄に陥った際の対策などについて紹介します。
目次
アパート経営で地獄を見る理由と原因
アパート経営で地獄を見る理由と原因は以下が挙げられます。
- 借金が多額で経営を圧迫
- サブリースを理解していない
- 高利回り物件のリスクを理解していない
- 情報の調査不足で、空室地獄
- 入居者トラブル
それぞれ詳しく紹介していきます。
借金が多額で経営を圧迫
アパート経営を始めるには、数千万円以上の初期費用が発生します。
この初期費用を自己資金ですべてを補うオーナーは少なく、金融機関から融資してもらい、アパート経営を始めるケースがほとんどです。
その際、多額の借り入れをしてしまい、借金地獄となる例が多く見られます。
過剰な額の借入金は、毎月の返済が負担になるだけでなく、空室やアパートの修繕など何らかのトラブルが発生した際の対応も難しくなります。
アパート経営を始めるために、多額の借り入れをしてしまい、経営や生活を圧迫してしまう」という失敗はよくある失敗なので、注意が必要です。
アパート経営では、固定資産税や管理費、保険料などによって継続的に費用が発生します。
これらの費用は、通常であれば賃料収入の一部でまかなうため、それほど負担になりません。
しかし、借入金が高額であれば状況は異なります。空室などが発生した際に、返済に回す資金などが収入を圧迫し、損失がカバーできなくなってしまいます。
そのため、事前に返済の計画を明確に立てておきましょう。また、ローンを借り入れる際にも自己資金を用意し、借入金額を金額に抑えておくことも大切です。
健全なアパート経営のためには、約3割の自己資金が必要といわれているので、それを目安に準備しましょう。
また、家賃の下落や、空室になるなど、建物の経年劣化によって将来起こり得るリスクを予想し、収支のシミュレーションを行うことも怠ってはなりません
サブリースを理解していない
アパートの管理方法には、大きく自主管理・管理委託・サブリースの3種類があります。
この中で、アパート経営の失敗で多いのが、サブリースのリスクを把握できなかったことによる失敗です。サブリースは「家賃保証」といった言葉で契約を進めてくる事業者も存在します。
言葉通り、家賃が保証されると思って契約したにもかかわらず、家賃の減額や想定外のアパートの修繕費で収入よりも支出が大きくなり、アパート経営が地獄と化してしまった事例も少なくありません。
サブリースとは、不動産管理会社がアパートのオーナーから物件をまるごと借り上げ、そのまま入居希望者に「又貸し・転貸」をする管理方法です。
オーナーがアパートを自主管理する場合、入居者の募集からメンテナンスまで幅広い管理業務をしなければいけません。しかし、サブリース契約を締結すると、管理会社が管理業務を請け負うため、アパート経営の知識が少なくても安心して任せられます。
また、サブリースを利用すると、空室状況に左右されず、一定の収入を得られるのも大きなメリットです。
しかし、物件の経年劣化や空き状況などの理由から、家賃の引き下げや見直しが行われることがあるため、必ずしも一定額が保証されるとは限りません。
また、サブリースは管理会社を間にはさむため、家賃収入額のすべてがオーナーの手元に入るとは限りません。家賃保証額の相場は約8~9割とされているので、自主管理と比較すると物件の利回りは低くなってしまうことも把握しておきましょう。
サブリース契約による失敗を防ぐには、設定金額の根拠を見極めることが重要です。
家賃保証の金額設定は、物件の状態やエリアなどを考慮し決定します。その金額が適正であるかどうか判断するのは、オーナー自身です。利用するかの判断として、保証賃料や諸費用など発生する費用負担の有無も事前に確認しておきましょう。
高利回り物件のリスクを理解していない
アパート経営が地獄化してしまう原因として、高利回りがハイリスクであることを理解していないケースが挙げられます。
利回りが高ければ、初期費用を早く回収できると考えがちですが、実はアパート経営の原因は高利回りの物件であるケースが多いです。
投資物件を選ぶ際の判断材料となる利回りは、投資金額に対する年間収益の割合を指し、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
表面利回りとは、物件の購入価格に対する満室時の年間家賃収入の割合を示します。対して実質利回りは、物件購入時にかかるすべての費用に対する、年間家賃収入からの諸経費を差し引いた割合を示します。
物件の状況を把握する指標にするのは実質利回りです。
実質利回りでも高利回り物件はありますが、
必ずしもよい物件とは限りません。
たとえば、築古物件です。築古物件は、築年数が経っているため初期費用となる物件価格は低く、周辺相場で貸し出せば、当然利回りは高くなります。
しかし、築古物件であるため設備の劣化や修繕などに思わぬ出費が発生するケースや退去のリスク、空室期間の長期化といった可能性が通常の物件よりも高いことに注意しましょう。
賃貸経営では、空室を抱えることは容易に発生します。地方の中古物件であれば、より空室のリスクを考慮する必要があります。
そして、利回りの算出方法は、賃貸需要を反映しているわけではないため、利回りの評価が実態と大きく異なる場合もあります。
アパート経営を安定させるために、利回りの数字だけで判断するのではなく、リサーチを行い、継続的に家賃収入を得られる物件なのか判断しましょう。
情報の調査不足で、空室地獄
アパートは、立地が悪く少し不便な土地でも建てられます。
賃貸需要とは、自分が賃貸物件の購入を検討しているエリアで需要が見込めるかどうかを判断するものです。 投資の可否を判断する際に賃貸需要を十分に把握することで、安定した賃貸収入を得られる可能性が高くなります。
しかし、その場所に一定の需要があるとは限らず、賃貸需要を満たせていない物件もあります。
そのため、価格は安いけど立地があまりよくないため、空室が続いているなどの理由で、経営不信に陥ることが多いです。また、どの物件に需要があるかは、地域の特色や入居者の世帯状況などによっても大きく異なります。
たとえば、小学校や幼稚園、病院などのファミリー世帯に人気のエリアに、単身者用のアパートを投資しても需要を満たせているとはいえません。
入居するターゲット層や周辺の地域制などを正しく考慮しながら、効率的に投資物件を選ぶ必要があります。
賃貸需要のあるエリアについて考えるときに、「人口移動数」を目安にする方法があります。一般的に、エリアの人口に対して物件数が少ないほど、アパートの需要が高いと考えられます。
加えて、周辺環境についての事前リサーチも必要です。空室地獄にならないためにも、不動産会社へ物件エリアへのヒアリングをしたり、ポータルサイトの賃料相場や空室情報などを参考にしたり、自身で多くの情報収集を行いましょう。
入居者トラブル
入居者と円満な関係を築くことができれば問題ないですが、アパート経営では入居者とのトラブルが起こるものと考えておきましょう。
よくある入居者トラブルには、以下のような事例が挙げられます。
- 家賃滞納
- 夜逃げ
- 騒音やゴミ出しなどモラルのない入居者による問題
- ゴミ屋敷化してしまったときの原状回復
万が一、家賃を滞納している入居者に、「人が住んでいる気配がない」「連絡が取れない」「郵便受けに手紙が溜まっている」「ガスや水道メーカーが止まっている」などの兆候があった際は注意しましょう。
また、夜逃げの疑いがある場合は、室内に入り確認したくなりますが、オーナーであろうと勝手に立ち入ると、法律で罰せられてしまうおそれがあります。
そのため、立ち入る前に保証人や本人、家族などに連絡をとり、警察に同行をお願いしましょう。
入居者と連絡が取れず、何カ月も家賃滞納が続く状態では、家賃の回収は難しいです。また夜逃げの場合、必要最低限の荷物のみを持ち出す傾向があるため、部屋に残っている家具や家電などの撤去費用も発生します。
また、法的措置に踏み切る場合も費用が発生するため、夜逃げによる経営損失は大きいです。
夜逃げや家賃滞納を回避するには、以下のような方法が有効です。
- 日頃から入居者とコミュニケーションを取る
- 入居審査の条件を厳しくする
- 契約時に本人以外の連絡先を入手する
しかし、入居者とのコミュニケーションには限界があり、入居審査の条件を厳しくすると空室を埋めることが難しくなります。
そのため、専門の管理会社に委託することがおすすめです。委託費用は発生しますが、その費用を含めたうえで、経営計画を立てる方が安全といえるでしょう。
ファイナンシャル・プランナーによる
みらい収支シミュレーションはこちら
リスクを未然に防ぐアパート経営のポイント
リスクを未然に防ぐアパート経営のポイントを以下4つ解説します。
- 資金計画をしっかり立てる
- 情報収集を怠らない
- リスク対策をする
- 適切な管理方式を選択する
資金計画をしっかり立てる
アパート経営のリスクを未然に防ぐには、資金計画を立てることが大切です。
資金計画や収支計画は、アパート建築会社から建物プランと合わせて提案を受けることができます。
資金計画では、家賃収入の見通しや空室リスク、修繕費など、10年・20年先のことを考えましょう。
キャッシュフロー(賃貸経営者の手元に残る金額)があればリスクを吸収しやすいため、収支だけでなくキャッシュフローも重視しておくことが重要です。
自己資金を最低3割用意する
アパート経営をするための自己資金は、いくら用意するのが適切かといった正解がありません。しかし、銀行は融資を行う際、担保価値を市場価格の7割で評価するため、3割が一定の目安とされています。
銀行は、融資額が市場価値の約7割であれば、万が一売却することになっても回収できると判断します。この銀行の担保評価の考え方に基づいて計画を立てると、3割の自己資金を用意してアパート経営を行えば、仮に上手くいかなくても売却をして撤退ができます。
売却する際にローンの残債が売却価格を上回らないようにするためには、自己資金を十分に用意し、借入金割合を下げておきましょう。
安易に追加投資をしない
アパート経営が軌道に乗ると、事業を拡大するために追加投資をしてしまい、気づいたら地獄化しているケースも多いです。
立て続けに追加投資をしてしまうと、借入金の比率が上がり、健全な財務内容が保てなくなってしまいます。築年数が経つ程発生する空室や修繕費をカバーできなくなってしまうため、注意が必要です。
アパート経営のリスクを防ぐためにも、十分な自己資金を確保し、万が一のときでも柔軟に対応できる経営体制を整えておきましょう。
情報収集を怠らない
アパート経営をはじめとした不動産投資の成功には、情報収集が重要です。エリアの賃貸需要や、人口の流れ、ターゲットのニーズなど、必要な情報は多岐に渡ります。
物件選びの重要なポイントは、以下の4つです。
- 立地条件や周辺環境(治安や利便性)
- 外観、内装、設備
- 築年数
- 間取り
ほかにも、周辺環境の変化も入居率に関わるため、再開発予定なども調べておきましょう。また、自然災害による損失を防ぐために、ハザードマップなどを利用して災害リスクを調べておく必要もあります。
これらの情報を不動産投資の初心者が集めるのは、とても大変です。そのため、エリアに詳しい不動産会社を利用するのも有効です。
しかし、業者にすべて任せるのではなく、自身も知識を身に付け、情報収集に取り組み、最新の情報を把握しておきましょう。
リスク対策をする
不動産投資には、勉強や情報収集を怠らず、安定した経営をしていても、以下のようなリスクを伴います。
- 空室
- 家賃滞納
- 災害
- 金利上昇
- 家賃下落
これらのリスクを避ける方法や損失を最小限に抑える方法を理解することが必要です。
すでにアパート経営を始めている場合は、適切なリスク対策が取れているか見直してみましょう。
また、アパート経営では、以下のような予期せぬリスクで被害を被ってしまうこともあります。
- 火災や地震、洪水などの自然災害
- 入居者の孤独死
こういったことが起きた場合、もとの状態に戻すには、費用もかかり、不動産の価値が目減りしてしまいます。
リスク対策には、保険で備えることが有効です。予想外のトラブルが起きる可能性もあるため、常に最悪を想定してできるだけの対策を取っておきましょう。
適切な管理方式を選択する
不動産投資では、オーナーだけですべてを正しく判断し、そのエリアに最適なアパートを選び安定した経営をするのは難しいです。
安定したアパート経営には、実績のある建築会社や管理会社を選び、サポートを受けながら経営に取り組むことが重要です。
そのため、不動産投資のリスクを未然に防ぐには、適切な管理方式を選びましょう。
アパートの管理方式には、主に、以下の2種類があります。
- 管理委託
パートオーナーが管理会社に管理を委託する方式。アパートオーナーは管理会社に家賃収入の約5%の管理料を支払う。 - 家賃保証型サブリース
アパートまるごとサブリース会社に転貸する方式。満室想定時の約80〜90%の手数料が差し引かれた固定額の賃料が入る。
この2つの管理方式の違いは、空室リスクをアパートオーナーが全負担しているかしていないかです。
管理委託は、収益性は高いですが、空室リスクがアパートオーナーの全負担となります。対して家賃保証型サブリースは、収益性は低いですが、空室リスクをアパートオーナーと保証会社が一緒に負担します。
また、家賃回収やクレーム対応などのオーナー業務は、管理会社に委託するのが一般的です。入居付けに強い管理会社であれば長い間空室になる心配もありません。
良質な管理会社の場合、しっかり入居審査を行ってくれるため、マナーの悪い入居者を未然に防ぐこともできます。業者を利用する際は、委託料や業務内容は管理会社によって異なるため、複数社を比較して依頼しましょう。
地獄から抜け出せないアパート経営は損切りも視野に入れる
アパート経営は、株投資よりも安定・安全といわれており、始める方が多いです。しかし、そういった慢心から、賃貸経営が地獄になってしまうこともあります。
アパート経営に失敗しているかもと感じていても、それを認めて損切りする決断はなかなかできません。
決断までが長引いてしまい、赤字額が積み上がり手遅れになってしまう場合もあります。そこで、損切りをするタイミングについて紹介します。
損切りとは
「損切り」とは、株式投資やFX投資でよく使用される言葉です。
これ以上有していても赤字額が増えるだけで、損をすることは明確だが、あえて売却するという意味を指します。
損切りするべき3つのタイミング
赤字への対策を先延ばしにしてしまうと、その分損失が増加してしまいます。気づいたときには、穴埋めしようがない状態になっていた、という場合になってしまいがちです。
具体的に損切りをするタイミングとして、以下3つが挙げられます。
- 損益分岐点まで家賃を下げても空室が埋まらない
- 周辺の人口が激変することが明確になった
- 大規模修繕工事の積立金が足りていない
家賃を下げて空室が埋まったとしても、利益は少ないです。さらに埋まらない場合は、利益すら出ないため、意味がありません。
また、アパートの周辺にあった大学が移転したり、大型商業施設などが撤退したりすると、物件エリアの人口が変動します。先ほど挙げたような状況が起こると、周辺の人口は減少する可能性が高いです。そのため、周辺の人口が激変することが明確になったタイミングでの損切りもひとつの手段です。
そして、アパートの場合、定期的に外壁の塗り替えなどの大規模修繕工事を行います。この費用は、各区分所有者が毎月積み立てていますが、いざ工事するとなったときに、金額が足りなく追加費用が発生する場合があります。
この積立額は、管理組合の資料を確認すれば、どのくらい収集しているのか分かるため、大規模修繕前後に関わらず定期的にチェックしておきましょう。確認して積立額が足りないようでしたら、損切りのタイミングです。
損切りは早ければ早い程やり直しがきく
株式投資の世界では、「儲からない株は損切りして、ほかの株を買う」というサイクルは当たり前ですが、不動産投資でも同じです。
損切りは、早ければ早いほど損失額を最小限に抑えられるため、売却したお金を元手に新しい黒字物件を購入すると、穴埋めができます。
損切りを思い立ったときがベストなタイミングです。アパート経営が厳しいと感じているのであれば、早期の物件売却も方法のひとつとして頭に入れておきましょう。
あなたのマンション・アパートの価格が分かる