不動産投資
サブリース新法をわかりやすく解説!賃貸オーナーが気をつけること
通称・サブリース新法は、詐欺的な業者が持ちかける契約を規制するために、2020年に施行されました。どうしてサブリース新法ができたのでしょうか。そして、サブリース新法とはどういう法律なのでしょうか。
目次
2020年12月「サブリース新法」が施行
2020年12月15日より「賃貸住宅の管理業務などの適正化に関する法律」、通称「サブリース新法」が施行されました。サブリース新法の内容は主に次の4点です。
- 誇大広告等の禁止
- 不当な勧誘等の禁止
- 契約締結前の重要事項の説明と書面の交付
- 契約締結時の書面の交付
サブリース新法は、これまでのサブリース契約で起こった問題を解決するために、新たに制定された法律です。サブリース契約を検討する際は、適用される法律の概要や動向についても理解しておきましょう。
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サブリース契約の仕組み
サブリース契約とは、賃貸住宅のオーナーが所有する物件をサブリース業者に貸し出す契約のことです。オーナーはサブリース業者から賃料を得て、サブリース業者は入居者に物件を貸し出して家賃収入を得ます。
オーナーは家賃設定や入居者の選定などの面倒な管理作業を業者に委託できるため、手間やコストをかけずに不動産賃貸業を営めるのです。
サブリース契約ではオーナーと借り手の双方がメリットを享受できるように、契約内容の確認など事前確認が重要です。
サブリース契約のメリット
サブリース契約を締結することで、オーナーは次の3つのメリットを享受できます。
安定した家賃収入が見込める
サブリース契約を締結することで、オーナーは安定した家賃収入を見込めます。これはサブリース契約によって、オーナーがサブリース業者から定額の家賃保証を受けられるためです。
さらに管理会社が入居者の選定や管理を行うため、オーナーは自身の手間や時間をかけずに済みます。
相続税対策に適している
サブリース契約では、継続的に定額の家賃保証を得られるため、相続税対策に利用されることがあります。
賃貸住宅をサブリース契約で貸し出すことで物件の相続税評価額が下がるため、相続税を減税する効果を得られるのです。
広告料やリフォーム費用が節約可能
オーナーが物件を貸し出す場合、広告費用やリフォーム費用などの負担が発生します。しかしサブリース契約によって、サブリース業者が入居者の選定や家賃集金、修繕などを担当します。そのため、通常であればオーナーが負担する広告費用や、リフォーム費用を抑えられます。
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サブリース契約のデメリット
サブリース契約にはメリットだけでなく、デメリットもあります。サブリース契約の主なデメリットには、次の3つがあります。
手数料が引かれるため収益が減る
サブリース契約により、サブリース会社に手数料が発生します。そのため、オーナーが自身で運営するよりも収益が減少します。
しかし、手数料率によっては、自己管理する場合と比べて効率的に賃貸収入を得ることが可能です。また、サブリース業者によっては、広告宣伝や入居者選定、家賃集金や修繕、建物の管理などの業務を担当してくれます。
賃料の見直しがある
サブリース契約では、賃料の見直しや改定が発生することがあります。定期的な見直しによって、賃料の改定が行われます。
また、契約期間中であっても法律や契約の条項に基づき、オーナーとサブリース業者の合意のもとで賃料の改定が行われることもあります。ただし、賃料の改定は収入が増えるとは限らず、減ることもあります。
入居者を選ぶことが難しい
サブリース契約では入居者選びをサブリース業者が行うため、基本的にオーナーは入居者を選ぶことができません。
ただし、サブリース業者が入居者の選定を行うときは、オーナーの希望条件や入居者に望む条件などを考慮したうえで適切な入居者を選定します。
サブリース業者によって、入居者を募集する方法やプロセスが異なります。サブリース契約を成功させるには、サブリース業者との密なコミュニケーションが欠かせません。
サブリース新法で変わったこと
ここではサブリース新法で変わった点について、4つ解説します。
誇大広告等の禁止
サブリース新法では、サブリース業者が誇大広告を行うことを禁止しています。
たとえば、家賃が下がるリスクがあるにもかかわらず、「家賃を保証します」というような「著しく事実に相違する表示」は誇大広告にあたります。ほかにも、客観的な根拠がないのにもかかわらず「維持保全費用は他社の半額」といった「優良・有利であると人を誤認するような表示」が該当します。
不当な勧誘等の禁止
サブリース契約を勧誘するときに、故意に事実を伝えなかったり、実際とは異なることを伝えたりする不当な勧誘を、サブリース新法では禁止しています。
サブリースのメリットだけを伝えて、将来的に家賃が下がったり契約を解除されたりするリスクをあえて伝えないような勧誘行為はできません。ほかにも、将来にわたって家賃を保証する、維持費用をすべて事業者が負担するなど、事実と異なることを伝えて勧誘することも同様に禁止されています。
そのほか、強引な勧誘もできなくなっています。もし、こういった勧誘を受けた場合は、消費者センターや都道府県の住宅供給公社などに相談ができます。
契約締結前の重要事項の説明と書面の交付
サブリース新法では、サブリース業者が契約を結ぶ前に、次の事項について説明を行い、書面を交付する必要があります。
- リース期間
- 家賃
- 転貸料
- 保証料
- 設備の有無
- 修繕費用負担などの契約内容
- 重要事項説明書の交付
契約締結時の書面の交付
サブリース新法では、サブリース業者がマスターリース契約を締結するときに、次の書面を交付する必要があります。
- オーナーの同意書
- オーナーへの保証、債務の遵守に関する契約書
- 契約に必要な情報を含む書面の交付
これらの変更点により、サブリース業者がより適切な「勧誘」や「広告」を行い、オーナーがより正確な情報を得て契約を結べるようになりました。
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サブリース新法の背景
サブリース新法が施行されたのは、オーナーとサブリース業者の間でトラブルが生じるのをあらかじめ防ぐためです。
- 事前に聞いていた契約内容ではなかった
- 条件の変更を一方的に求められた
これらの理由でサブリース契約による、多くのトラブルが発生しました。ここでは「かぼちゃの馬車事件」を例に、どんなことが起きたのかを解説します。
かぼちゃの馬車事件とは
かぼちゃの馬車とはスマートデイズが運営していた女性専用のシェアハウスのことです。スマートデイズはシェアハウス建築の話を持ちかけ、建てたシェアハウスとサブリース契約を行う事業を展開していました。
かぼちゃの馬車では、家賃保証型のサブリース契約を行っていました。空室が発生してもオーナーが得られる賃料が減らないメリットがあり、会社員などに人気の不動産投資となりました。
しかし、2018年にスマートデイズは、破産手続きを行います。
自己破産するオーナーも
スマートデイズは、あるときオーナーへ一方的に賃料減額を要求し、ついには賃料の振り込みがなくなって問題が明るみになります。オーナーは賃料による収入がなくなるだけでなく、シェアハウスを建てたときのローンの返済もあったため、なかには自己破産へ追い詰められる人もいました。
事件の発覚後、スマートデイズと金融機関が手を組み、書類を改ざんするなどして本来では借りられないほどの大型融資をしていたことが明らかになりました。かぼちゃの馬車事件は、金融機関とスマートデイズによる不動産詐欺事件だったとされています。
このような詐欺的な契約をなくすために施行されたのが、サブリース新法なのです。
サブリース契約の注意点
サブリース契約のデメリットは、長期間の安定した収益を期待できる反面、リスクも存在することです。不動産投資におけるサブリース契約の注意点について解説します。
サブリース契約の内容をしっかり確認する
サブリース契約を締結する前に、サブリース会社との契約内容を詳細に確認しておきましょう。 たとえば、次の項目の金額設定は、借り手であるサブリース業者によって異なります。
- 家賃
- 修繕費
- 更新料
- 管理料など
サブリース契約の内容は、具体的に記載するように打ち合わせることも必要です。トラブル発生を防ぐために契約内容の確認を心がけましょう。
サブリース業者の信用状況を確認する
サブリース契約では、サブリース業者が入居者との契約や支払いについて責任を持ちます。そのため、サブリース業者が経済的に不安定だったり、支払いに遅延が生じたりする場合は、収益の確保ができなくなるおそれがあります。
サブリース業者の信用状況をしっかりと確認し、リスクに都度対応することが求められます。
原状回復費用について確認する
サブリース契約終了後には、原状回復費用が発生することがあります。原状回復費用は、敷金や保証金を超える場合があるため、費用について契約で取り決めをすることが必要です。
また、費用の見とおしを立てておくことで投資収益を考慮した判断ができます。
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