投資マンション基礎知識
マンション経営におけるリスクと回避するポイントを解説
マンション経営にはさまざまな形態があります。不動産会社やマンション管理会社などプロによる経営と一般の人による経営です。また、区分所有によるものと一棟丸ごと所有しての経営があります。
プロではない一般の人にとって、マンション経営は大きな不安と期待が混在します。マンション経営におけるリスクについて解説するので、検討している方は参考にしてください。
目次
マンション経営のリスク
マンション経営による代表的なリスクを7つ紹介します。
諸経費の見落とし
マンション経営には、購入(入口)→運用(賃貸)→売却(出口)という各場面があります。場面に応じてさまざまな諸経費がかかります。
マンション経営に失敗する人は、この諸経費の見落としが原因のひとつです。マンション経営における諸費用を以下にまとめます。見落としによる経営悪化にならないように注意しましょう。
購入時 | 仲介手数料、不動産取得税、所有権登記費用、抵当権設定登記、銀行ローン手数料 |
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運用時 | ローン返済、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料、賃貸管理会社への報酬、設備等の修繕およびメンテナンス費用、原状回復費用、所得税や住民税 |
売却時 | 仲介手数料、抵当権抹消登記、譲渡所得税 |
老朽化や周辺環境の変化
時間が経過すればマンションは老朽化します。つまり修繕費用やメンテナンス費用が従来よりも増えていきます。
具体的には設備の故障や寿命による交換です。また、一般的には築年数が古くなると賃料は安くなるという傾向があります。同様に売却する場合も価格が下がるのが一般的です。
ほかには周辺環境の変化です。たとえば、地元企業や学校の移転による賃貸需要の変化が考えられます。逆に新たな企業の参入や都市開発による、賃貸需要への追い風もあり得ます。
入居者トラブル
株や投資信託などほかの投資とマンション投資の大きな違いは、人的リスクが存在することです。たとえば、入居者トラブルです。
マンション経営において物件と入居者は車の両輪のようなものであり、一方だけが良好では成り立ちません。本来入居者は利益をもたらしてくれる大切なお客様です。しかし、場合によってはトラブルにより不利益が生じることもあります。
具体的には、賃料滞納・事故・騒音・臭気の発生などです。とくに事故は内容によっては事故物件となり次の入居者募集や賃料にも影響します。
災害
台風や地震などの自然災害や、近隣の火災・爆発などから損害を受けることが考えられます。周辺での犯罪発生も入居者の安心した居住に影響を及ぼす人的災害です。
これらは、外部的な要因のため防ぐことが困難です。保険の加入や見直し、そして事後対策が重要です。
空室
入居者が退去したあと新しい入居者が決まるまでは空室になり家賃収入がありません。とくに区分マンション1室だけの経営であれば、空室期間=家賃収入なし、ということになります。
場合によっては何カ月も空室になる物件もありますが、銀行へのローン返済は続きます。この空室期間をできるだけなくすのが、マンション経営の大きなポイントです。購入物件の選び方と、普段の物件管理により予防できます。また、マンションを複数戸所有しリスクを分散させるのも有効です。
金利上昇
物件を購入する際に多くの場合は銀行でローンを組みます。そして、変動金利で融資を受ける人が多いです。理由は固定金利よりも金利が低いからです。
しかし、変動金利はその名のとおり金利が変動します。厳密には半年ごとに金利が見直されます。 金利が上がれば毎月のローン返済額は増えますが、結果的に当初見込んでいた利益が低くなってしまいます。
契約内容
意外と盲点なのが、入居者と交わす賃貸借契約書および重要事項説明書などの内容です。とくに2020年4月施行の民法改正では、入居中の修繕・連帯保証人・退去時の原状回復・敷金精算など多数の法改正がありました。
入居者(契約者)に対して適切な契約書類の作成と説明がされないと、入居者トラブルにつながります。
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マンション経営のリスクを回避するポイント
リスクをそのままにしてはいけません。回避あるいは予防できるものはあります。その方法について解説します。
物件選び
何といってもマンション経営は物件選びが一番重要です。とくに重要なポイントは立地と周辺環境です。
住みやすく便利で安心な立地であれば、入居者はその場所を気に入り長く住んでもらえます。たとえば、ターゲットにしている入居者が女性の1人暮らしの場合、所在階が2階以上で駅からは暗い夜道をとおらずに帰宅できることなどもポイントです。ファミリーであれば、買い物に便利で子どもが安全に過ごせる、病院が近いなどの周辺環境も大切です。
また、物件は必ずしも新しければよいわけではありません。むしろ新築にこだわるのはマンション経営にとって危険要素です。立地が悪い新築よりも好立地な中古がおすすめです。部屋の間取りとマンション共用部分の設備もよく吟味しましょう。
管理会社選び
管理会社を選ぶポイントは、提案力があり対応が早くて丁寧なこと、情報量と機動力があることです。
そして、管理戸数が多く歴史が長ければ安心できます。こういった管理会社は入居者トラブルや空室リスクを事後に解決する以外にも、事前に予防してくれます。ほかには、利益が上がっていて倒産リスクがない会社を選ぶことです。従業員の出入りが激しかったり、管理委託報酬が安すぎるところは要注意です。
入居者選び
マンション経営で失敗しないためには、賃料のわずかな高さよりも「早く・良い人に・長く住んでもらうこと」が鉄則です。つまり入居審査です。これは非常に重要です。
そして、良い人が入居したら長く住んでもらうために、場合によっては今後契約更新を重ねたとき、賃料などについて柔軟な契約対応をすることも検討しましょう。
投資試算
物件購入を検討するときは諸経費や金利上昇リスクなどを加味して試算しましょう。銀行ローンの比率が高いと当然に収支は落ちます。
試算を基に、購入する物件価格と借り入れるローンの比率を逆算します。これによりリスクを下げます。
保険活用
自然災害や地震を補償するものはもちろん、オーナーの賠償責任補償も付けましょう。
たとえば、配管の劣化による水漏れ事故が起こり入居者の家財に損害が生じた場合、オーナーの管理責任となりますが、これを補償します。
ほかにも地震保険の上乗せ補償や家賃収入特約、事件が起きた際に役立つ家主費用特約などもあります。入居者にも入居者用火災保険の加入をしてもらいましょう。
家賃債務保証会社を活用
民法改正の影響もあり、現在では連帯保証人ではなく家賃債務保証会社(保証会社)を利用することが一般的になっています。
保証会社は多数ありますので、管理会社が手配する保証会社のプラン内容を確認しましょう。保証会社のプランによっては入居者の負担が大きくなってしまうため、注意が必要です。
賃貸借契約手続き
内容が正しくきめ細やかで、入居者(契約者)にキチンと理解してもらう契約を結ぶことは、不要な入居者トラブルを避けるために大きな成果を生みます。
オーナーによっては契約書をまったく確認しない方もいます。トラブル防止のためにもしっかりと目をとおし、不明点等がないようにしておきましょう。
マンション経営におけるリスクは完全には排除できない
マンション経営を考えるうえで重要なことは、数多くの投資手段のひとつであるということです。リスクを完全排除することはできず絶対的な利益保証はありません。では、どのようにリスクと付き合っていくべきなのでしょうか。
強いメリットがあることを忘れない
マンション投資はすぐに結果が出るものではありません。そのため、途中で挫折してしまう方も多いのです。
そうならないためにも、マンション投資のメリットを忘れてはいけません。インフレに強い、資産形成ができる、税金対策になるなど多くのメリットがあります。急に負担の大きな諸経費がかかったり、空室が続いて家賃収入が減ったりしたときは、目先にとらわれず、メリットと比較しながらマンション投資を続けるかどうかを考えましょう。
メリットを理解し、そして享受しなければマンション投資は継続できないでしょう。
余剰資金で行う
マンション投資は必ず効果が出るものではありませんし、長期的な運用が必要です。そのため、余剰資金がない方にはおすすめできません。
ある程度の余裕がある状態で始めることで、リスクにも柔軟に対応できるようになります。一方で、余剰資金がなければ急な修繕などに対応ができません。対応が後手にまわることで空室リスクにつながり、結果的にうまくいきません。
そのため、資金にある程度余裕のある状態が望ましいです。資金の余裕は心の余裕にもつながり、適切な判断ができるようにもなります。
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