投資マンション税金
区分マンションの固定資産税はどれくらいかかる?計算方法をわかりやすく解説
マンションで不動産投資を行っている人にとって、固定資産税は利回りにも影響するコストのひとつです。どれくらいの固定資産税がかかるのかを把握しておきましょう。固定資産税を算出する方法や、軽減措置なども紹介していますのでぜひ参考にしてください。
目次
区分と分譲でマンションの固定資産税は違う?
区分マンションと分譲マンションは、どちらもマンションの一部屋を売却する際に使う用語です。意味は同じですが、使い方が異なります。
一般的に、自身が住んでいるマンションを売却する際は、分譲マンションと呼びます。一方、所有するマンションを人に貸している状態で売却する際には、区分マンションと呼ぶケースが多いです。
不動産の取得または所有により課税される税金には、不動産取得税や登録免許税のように、居住用と投資用で税額が異なる場合があります。
しかし、固定資産税は住居の用途が変わっても税額は変わりません。同じマンションの同じ部屋なら、居住用でも投資用でも固定資産税は同じ金額です。
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区分マンションの固定資産税を計算する方法
区分マンションの固定資産税を計算するには、見慣れない用語が使われるため、わかりにくいと感じる方も多いかもしれません。
ここでは、固定資産税の計算に使われる用語と仕組みを解説します。固定資産税の基本をしっかりと理解できれば、投資にかかる費用と固定資産税の税額から不動産投資のコストなどを把握する役に立つでしょう。
固定資産税とはどういう税金?
固定資産税とは、固定資産に対して市町村が課す税金のことです。東京23区の場合は東京都が課税します。
固定資産には、以下のような種類があります。
種類 | 固定資産 |
---|---|
土地 |
|
家屋 |
|
償却資産 |
|
参照:総務省「固定資産税」
固定資産税を納税するのは、固定資産を使用している人ではなく、毎年1月1日に固定資産を所有している人です。毎年5〜6月ごろに固定資産の所有者に納付通知書が郵送され、4月から1年間の税額を一括あるいは4回に分割して納めます。
固定資産税は、固定資産を所有していると毎年課せられる税金です。空き家でも賃貸に出していても、所有している限り支払わなければなりません。
固定資産税を計算する仕組み
マンションや戸建て住宅の固定資産税は、土地と建物それぞれの税額を計算して合計した金額です。固定資産税の税額は、固定資産税課税標準額に標準税率をかけて算出します。
固定資産税=固定資産税課税標準額×税率
以下に、固定資産税を計算する仕組みを詳しく解説します。
固定資産税評価額
固定資産税を理解するには、固定資産税評価額の理解が重要です。
固定資産税を計算する基準が固定資産税評価額です。固定資産税評価額は、土地や家屋の評価方法を定めた固定資産税評価基準を基にして、各市町村が土地や家屋をひとつずつ検討して決定します。
固定資産税評価額は3年に一度評価替えを行い、評価額が見直されます。
土地と家屋の固定資産税評価額は決め方が異なるため、違いをしっかり理解しましょう。
土地の固定資産税評価額
土地の固定資産税評価額は、市区町村が毎年公表している固定資産税路線価を基準に算出します。固定資産税路線価は、公示地価の約7割に設定されるように調整されています。
土地の固定資産税評価額=固定資産税路線価×土地の面積=公示地価の約7割
路線価とは、家屋が面している道路ごとに設定される、土地の価格の基準をいいます。1㎡あたりの価格で表示されます。路線価は、税務署が税金を算出するたびに、毎回土地の価格を調べなくてもよいように公表されている価格です。
地価の上下によって固定資産税評価額も変動する可能性がありますが、急激な上下変動を避けるために税額が調整される場合があります。
家屋の固定資産税評価額
家屋の固定資産税評価額の基になるのは再建築価格と経年減点補正率です。再建築価格とは、対象の建物と同一の建物を評価時点で同じ場所に新築すると仮定して、必要となる建築費のことです。屋根、外壁、天井など部分別に算出して合計します。
家屋の固定資産税評価額=再建築価格×面積×経年減点補正率
経年減点補正率とは、新築時から築年数が経つにつれて経年劣化していくのを数値で表したものです。例えば、木造以外の建物の場合、築6年ならば再建築価格に0.8335をかけた金額が評価額となります。
経年減点補正率の例
築5年 | 0.8569 |
築6年 | 0.8335 |
築10年 | 0.7397 |
築15年 | 0.6225 |
つまり、新築時の価格から、年数を経て経年劣化した価値を減点補正率で算出して差し引き、現在の価格を算出します。建物の固定資産税評価額は、建築費の5~7割になるのが一般的です。
固定資産税の調べ方
固定資産税評価額は計算すれば算出できますが、中古マンションの場合は以下の方法で簡単に調べられます。
- 固定資産税の納税通知書で確認する
- 市役所または区役所で、固定資産評価証明書を取得する
固定資産税を納付するために郵送される納税通知書には、固定資産税の算出の根拠が記載されています。固定資産税評価額も記載されているため、簡単に確認が可能です。
また、役所では固定資産評価証明書を取得できます。市区町村によって名称が異なるため、最寄りの役所で確認してから取得しましょう。
評価証明書には、土地や家屋の評価額、課税標準額、面積、税額などが記載されています。ただし、取得できるのは土地や家屋の所有者本人あるいは委任状を持参した者です。また、取得には一定の手数料がかかります。
固定資産税課税標準額
固定資産税課税標準額とは、固定資産税を算出する対象の価額のことです。課税標準額に税率をかけて、税額を算出します。
固定資産税=固定資産税課税標準額×標準税率1.4%
土地の固定資産税評価額は軽減措置が適用される場合があり、適用された場合の課税標準額は固定資産税評価額に軽減措置を適用した金額になります。
家屋は固定資産税評価額が、そのまま課税標準額になるケースがほとんどです。
標準税率
固定資産税の標準税率は1.4%です。ただし、税率は自治体ごとに決定できるため、異なる税率を適用している自治体もあります。固定資産税を計算する際は、土地や家屋が所在している自治体に確認しましょう。
区分マンションの固定資産税を計算する方法
区分マンションと戸建ての固定資産税の算出方法は異なります。マンションの場合は居住する部分だけを所有し、そのほかの共有スペースなどは全住民で共有する形式を取っているためです。
以下に、区分マンションの固定資産税の計算方法を解説します。
各所有者の持分とは
マンションは、土地も家屋も区分所有者全員で共有している固定資産です。そのため、固定資産税は、区分所有者の持分に応じて按分します。
区分所有者の持分の計算方法は、土地と建物で異なります。
土地の持分=各区分の専有面積÷全区分の専有面積の合計
土地の場合、すべての区分部分の専有面積の合計に対する各区分の専有面積の割合が各区分所有者の持分となります。
建物の持分=各区分の専有面積+(共有部分の合計面積÷全区分の専有面積の合計×各区分の専有面積)
建物の場合、専有部分以外に共有部分も按分されるため、共有部分を専有面積の割合で按分した面積と専有部分の面積の合計が所有する面積です。そのため、持分は建物全体の床面積に対し、所有する面積の割合となります。この場合の専有面積とは、登記簿に記載されている内法の面積です。パンフレットなどに記載される壁芯の専有面積ではないため、注意しましょう。
土地の固定資産税
区分マンションの土地の固定資産税は、土地全体の固定資産税の税額を各区分所有者の土地持分で按分した金額です。
建物の固定資産税
区分マンションの建物の固定資産税は、建物一棟の固定資産税を算出し、各区分所有者の建物持分で按分します。
都市計画税とは
固定資産税と混同されやすい税金に、都市計画税があります。都市計画税とは、市街化区域内で都市計画区域に指定されている土地や建物に課せられる税金です。市区町村が課税し、都市計画事業や土地区画整理事業など、主に市街地を整えるために利用されます。
固定資産税は、都市計画区域外にある土地や家屋にも課税される点が異なります。
どちらも市区町村が課税するため、固定資産税と都市計画税を一緒に納税する場合がほとんどです。納税通知書に固定資産税と都市計画税の税額が記載されており、合計額を納めます。
区分マンションの固定資産税の軽減措置
区分マンションの固定資産税は、軽減措置を適用できる場合があります。ここでは固定資産税の軽減措置の概要を解説します。所有している区分マンションに適用されるかをしっかり確認しましょう。
住宅用土地の軽減措置
居住用マンションの敷地となる土地に対する固定資産税の軽減措置です。要件に当てはまる場合は、課税標準額が軽減されます。
小規模住宅用地 | 一般住宅用地 |
---|---|
1戸あたり200㎡以下の部分 | 1戸あたり200㎡を超える部分 |
課税標準を6分の1に軽減 | 課税標準を3分の1に軽減 |
マンションの敷地面積を持分で按分した面積において、1戸あたり200㎡以下の部分の課税標準額が6分の1に軽減されます。200㎡を超える部分の軽減は3分の1です。
新築マンションの軽減措置
築5年以内のマンションには、家屋の固定資産税の軽減措置があります。固定資産税の税額を軽減する措置です。
軽減措置を受けられるのは、次のマンションです。
- 2024年3月31日までに新築
- 3階建て以上
- 耐火構造または準耐火構造
- 住宅の居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下
家屋の床面積のうち120㎡までの部分について、新築してから5年間、建物の固定資産税額が軽減されます。床面積が120㎡を超える部分には適用されません。
居住部分の床面積の要件があるため、適用されるかしっかり確認しましょう。
長期優良住宅の軽減措置
長期優良住宅とは、耐震性や省エネ対策などの審査により、長期的に良好な状態で使用できる住宅として認定された住宅のことです。
長期優良住宅に認定されたマンションは、建物の固定資産税の軽減措置があります。対象となるのは、一戸の居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下の住宅です。
新築してから7年間、建物の固定資産税額が2分の1に軽減されます。適用されるのは居住部分の床面積が120㎡までの部分です。
マンション長寿命化促進税制
築20年以上で総戸数10戸以上の中古マンションを対象に、屋根や床の防水工事や外壁塗装など長寿命化と認められる工事を行った場合、マンションの固定資産税を工事翌年に軽減する制度です。マンションの管理組合が工事完了後3カ月以内に、市町村へ申告する必要があります。
長寿命化促進税制は、2023年度の税制改正で決められた措置です。2025年3月31日までに工事が完了したマンションに適用できます。適用するには要件を満たす必要があるため、概要をしっかり確認しましょう。
区分マンションの固定資産税を計算してみる
ここまで区分マンションの固定資産税について解説しました。ここからは、実際に区分マンションの固定資産税をシミュレーションしてみましょう。
以下の例で、固定資産税の税額を計算してみます。
- 築年数 3年
- 専有面積 80㎡
- 総戸数60戸の専有面積の合計 4,000㎡
- 土地全体の固定資産税評価額 3,000万円
- 建物の区分部分の固定資産税評価額 600万円
土地の固定資産税額を計算しましょう。
- 持分 80㎡/4,000㎡=1/50
- 土地の課税標準額=3,000万円×住宅用地の軽減措置1/6=500万円
- 500万円×税率1.4%×持分1/50=1,400円
建物の固定資産税額を計算しましょう。
区分の評価額600万円×税率1.4%×新築の軽減措置1/2=42,000円
土地と建物の税額を合計しましょう。
土地の税額1,400円+建物の税額42,000円=43,400円
この例の固定資産税額は43,400円となります。
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