不動産
築40年のマンションを「売る」か「貸す」か。間違った選択をしないために
築40年のマンションは「売る」または「貸す」のどちらを選択すべきでしょうか。
マンションの寿命や売ったときと貸したときの比較を解説します。築年数が経過したマンションの特徴を理解し、後悔のない選択をしましょう。
目次
築40年のマンションはこれからどうなる?
そもそも、マンションはどのくらい住めるのでしょうか。築40年のマンションが今後どうなってしまうのかについて解説します。
マンションの寿命
2013年に早稲田大学の小松幸夫教授が公表した「建物の平均寿命実態調査」によると、鉄筋コンクリートのマンションの寿命は68年と報告されています。
ここでいう寿命は、マンションが竣工してから解体されるまでの時間であり、物理的に何年もつか、というものではありません。マンションの主要構造であるコンクリートや鉄筋の施行条件、維持管理や修繕頻度などによりますが、物理的には100年以上もつともいわれています。
つまり、物理的にはまだ利用できるが、経済性や機能面からマンションは寿命を迎えて解体されているのです。
築40年のマンションの選択肢
国土交通省の発表によると2022年末時点で、築40年以上のマンションは全国に約125.7万戸あり、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加するといわれています。
国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」より
40年以上経過したマンションは、平均的な寿命に徐々に近づいています。寿命を意識すると、築40年のマンションには以下のような選択肢があります。
- 大規模改修の実施
- マンションの建替え
- 「売る」または「貸す」
大規模改修の実施とマンションの建替えは区分所有者一人だけでの判断ではなく、各区分所有者が組合員となって運営される管理組合が決定することになります。
大規模改修とマンションの建替えについて解説し、次章で「売る」と「貸す」を比較していきます。
大規模改修の実施
築年が経過すると、マンションは機能や性能が劣化していきます。
建物や設備の性能を維持するため、大規模な改修が必要になってきます。分譲マンションの場合、一般的に12〜15年のサイクルで共用部分の大規模改修を実施します。
実際の劣化状況により異なりますが、おおむね1回目の大規模修繕(築12~15年)で屋上や外壁の工事、2回目(24~30年)はエレベーター交換や受変電設備に加え、ドアや窓サッシなど広い範囲で工事を行います。
3回目(36〜45年)には建物全般で工事が発生します。築年数が経過するごとに修繕範囲は広がり、当然費用も膨らみます。そのため、築40年が経過したマンションでは区分所有者が負担する修繕積立金が上昇する傾向にあります。
また、専有部分においても築40年を経過していれば、快適に暮らすためには定期的なリフォームが必要です。トイレや浴槽、キッチンなどの水まわりは15〜20年、フローリングや壁紙などの内装は15年程度がリフォームの目安といわれています。
マンションの建替え
マンションの築年数が経過すると、性能を維持するための修繕改修費用が増大するため、建替えたほうが経済的合理性が高くなります。
しかし、マンションの建替えは非常にハードルが高く、途中で頓挫したり、先送りになるケースが多いです。国土交通省によると、2021年末時点で築50年以上のマンションは全国に21.1万戸あり、マンションの建替え実績は2022年4月時点で累計270件となっています。
国土交通省「マンションを取り巻く現状について」より
マンションの建替えが難航する一番の理由は、建替えに要する費用の問題です。マンションの建替えには、既存マンションの解体、新築の設計および建築費用のほか、工事期間中の仮住まいや引越し費用が発生します。
また、区分所有者の合意形成の難しさも大きな原因です。マンションの建替えは区分所有法により定められており、区分所有者で構成される管理組合で建替えに関する合意形成を行う必要があります。
具体的には、区分所有者の5分の4以上の賛成と、議決権で5分の4以上の賛成による決議が必要です。築年数が経過すれば、区分所有者の高齢化に伴いライフスタイルが変化し、マンションを売却する人が増えます。住環境などが気に入って長期間暮らしている人、中古で購入したばかりの人、管理組合の活動に参加しない人など、区分所有者の意見をまとめあげるのは難しいのです。
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築40年のマンションを「売る」、「貸す」を比較
築40年のマンションを「売る」と「貸す」を比較したものが以下です。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
売る |
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貸す |
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築40年のマンションを売る場合と貸す場合について詳しくみていきましょう。
築40年のマンションを売る
築40年のマンションを売却すると、これまで管理組合に支払っていた管理費や修繕積立金は不要になります。
住宅ローンの残債が少なければ、売却益が発生して手元資金が得られます。注意しなければならないのは、売却価格が大きく下落している場合です。売却価格が下がっていると住宅ローンを完済できないリスクがあります。その場合、自己資金で不足分を穴埋めするか、売却を諦める必要があります。
また、売却価格の設定や売却方法を間違えると、売却するまでに相当な時間を要したり、成約できないリスクがあります。また、マンションを売却する場合、不動産仲介会社に支払う仲介手数料、譲渡所得税や印紙税、抵当権抹消登記費用が発生します。
築40年のマンションを貸す
不動産を保有しながら第三者に貸せば、家賃収入を得られます。家賃収入が住宅ローンや管理費などの維持管理コストを上回れば、安定的な収入を確保できます。
売却する場合と同様に、新築物件と比較して期待できる賃料は下落しています。また築40年を経過すると、賃貸市場での競争力は低下し、空室が続いてしまうおそれがあります。安定した賃貸収入を得るには、キッチンやトイレなどの水まわりや壁紙などをリフォームする初期投資費用が必要になります。
また、賃貸に出す場合、区分所有者として物件は保有し続けるため、修繕積立金や管理費などは継続して負担することになります。
自分に合った選択をするために必要なこと
マンションを売る、または貸すにはそれぞれメリットとデメリットが存在します。そのため、どちらを選択すべきかは人によって異なります。自分に合った選択をするために考えるべきことを紹介します。
ライフプランを明確にする
「売る」か「貸す」を選択するには、まず自身のライフプランを明確にする必要があります。
手狭で引越ししたいなど、マンションを将来利用する可能性がなければ「売る」をメインに考えるでしょうし、転勤などで将来戻りたいのであれば「貸す」という選択になるでしょう。
まずは、「マンションをどうするか」よりも「今後どのようなライフスタイルになるか」について考える必要があります。
市場での価値を把握しておく
築40年のマンションの場合、不動産マーケットでどのような評価をされるかを事前に整理しておくことが重要です。
マンションは築年が経過すれば、価格は下落します。理由としては、新築マンションと比較して、外観などの陳腐化や耐震性の不安、天井の高さや水回りのスペックが見劣りするためです。
また、築40年が経過すると先述のとおり、管理組合が正常に運営することが難しくなるケースが多く、適切な修繕や管理体制が確保できないおそれがあります。一方、立地に希少性があったり、適切に維持管理されたマンションは、築40年が経過しても高い評価が得られます。
マンションの市場価値を調べるには、専門知識が必要になります。築年が経過すればするほど管理状況や管理組合の事業計画などを分析して、評価額に反映する必要があり、評価は複雑になります。間違った判断を行わないために親身になって相談できる不動産会社に相談することをおすすめします。
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