投資マンション売却
区分マンションの積算価格をわかりやすく説明!計算方法や売買価格との差は?
区分マンションなどの不動産には、その価値を示すいくつかの指標があり、そのひとつが積算価格です。
積算価格は、金融機関による融資を受ける際の担保評価で利用されることが多いですが、売買価格とまったくの無関係ともいえません。
区分マンションの積算価格について、具体的な計算方法や売買価格との違いを紹介します。
目次
積算価格とは
積算価格の基本的な考え方を押さえておきましょう。
不動産価格の考え方は複数存在する
そもそも区分マンションなどの不動産の価格は、考え方がひとつではありません。
日常生活の中では、同じ物の価格は、取引相手が変わったとしても変わるないことが多く、これを一物一価といいます。
しかし、不動産に関しては、同じ不動産であっても取引相手が変わるとその不動産の目的とする用途や評価方法が異なることから価格も異なります。これを一物多価といい、不動産業界においては一般的な考え方として浸透しています。
積算価格と収益価格
不動産の価格は大きく分けて、以下の2つがあります。
- 積算価格
- 収益価格
積算価格は費用面、収益価格は収益性に着目した価格です。
積算価格は、土地と建物を再度取得するときにかかる費用を不動産の価値とする考え方により算出されるものです。再調達価格ともいい、不動産の本質的な価値に近しいとされています。
一方、収益価格は、その時点から将来にわたって対象の不動産から得られると合理的に考えられる収益の総額を不動産の価値とする考え方により算出されるものです。
それぞれの価格について、特徴を知ることが重要
積算価格と収益価格の考え方は、どちらか一方が優れているわけではありません。両方の価格の考え方を知ったうえで使い分け、今後の活用方針の検討に役立てるのが適切です。
たとえば、金融機関による融資を受ける際の担保評価では、積算価格が採用されることが多いでしょう。これは、現在は価格の変動があったとしても、いずれは本質的な価値に価格は集約する考えられるためです。
一方で、REITをはじめとする証券化不動産に組み入れられる際の評価は、一般的に収益価格が採用されます。これは、あらかじめ証券化にあたって投資期間を定め、その期間で実際に賃料収益を獲得する必要があることが大きく関係しています。
このように、価格算定の考え方を知ったうえで、用途ごとに採用する価格を使い分けることが重要です。
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区分マンションの積算価格はどう計算する?
では、区分マンションの積算価格は、どのように決められているのでしょうか。具体的な計算例と併せて確認しましょう。
積算価格=土地価格+建物価格 × 持分割合
区分マンションの積算価格は、マンション全体の土地価格と建物価格を合算したものに、持分割合を乗じたものです。具体的には、以下のように計算できます。
区分マンションの積算価格=(土地価格+建物価格) × (自身の専有面積 ÷ 延床面積)
土地価格と建物価格は、それぞれどのように求められるのでしょうか。
土地価格の求め方
土地の価格は、相続税路線価、固定資産税路線価、地価公示価格、基準値価格といったさまざまな指標があります。課税の際の基準や不動産取引における参考指標としてなど、目的は異なりますが、いずれも国や県、市といった行政機関によって示された価格です。
積算価格としては、一般的には固定資産税路線価と地価公示価格が採用されるのが一般的です。
これらの価格を参考にしながら、対象不動産における土地の形状や接道の幅員といった個別の要因を事情補正(より便利な土地は高く、より不便な土地は安く)して価格を計算します。
建物価格の求め方
建物価格は、その建物の構造ごとに目安となる単価に、面積を乗じることで計算できます。
ただし、計算した価格は新築した場合の金額のため、これに減価償却を考慮することで現在の価値に近づけます。
減価償却は、時間の経過とともに資産の価値が下がるという考え方です。減価償却を考慮するには、資産を使用できる期間として国税庁が定めている法定耐用年数を使います。
資産に残っている価値は、1-経過した年数/法定耐用年数で求められるため、建物の積算価格の計算式は、以下のとおりです。
建物の積算価格=構造ごとの単価 × 面積 × (1-築年数/法定耐用年数)
なお、構造ごとの単価は国税庁や国土交通省が毎年統計データを公表しているため、参考にできます。
2023年度における構造別の単価水準
全国平均(円/㎡) | 東京都(円/㎡) | |
鉄骨鉄筋コンクリート | 26万5,000 | 33万 |
鉄筋コンクリート | 28万 | 34万 |
鉄骨造 | 27万 | 32万 |
参考:国税庁「地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和5年分用】」
区分マンションの具体的な計算例
イメージしやすいよう、具体的な計算例を簡潔に説明します。条件は、以下のとおりです。
土地 |
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建物 |
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土地の価格は、固定資産税路線価をもとに、以下の計算式で求められます。
土地価格=10万円×1,000㎡=1億円
次に、建物を新築した場合の価格は、以下のように計算できます。
建物の新築価格=28万円 × 2,400㎡=6億7,200万円
また、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は、国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」によると47年です。そこから、減価償却を考慮して現在の建物価格を求めます。
建物価格=6億7,200万円 ×(1-5年/47年)=約6億円
つまり、土地と建物を合わせた積算価格は、以下のとおりです。
土地と建物の積算価格=1億円(土地)+約6億円(建物)=約7億円
ただし、上記はマンション全体の合計額です。区分マンションの持分割合は、以下のとおりです。
持分割合=120㎡ ÷ 2,400㎡=5%
7億円に持分割合を乗じて区分マンションの積算価格を出します。
区分マンションの積算価格=約7億円 × 5%=約3,500万円
区分マンションの積算価格と売買価格の違い
区分マンションの積算価格は、売買価格とどういった違いがあるのでしょうか。
物件そのものの価値=売買が成立する価格ではない
積算価格は、物件そのものの本質的な価値を表す価格に近いと考えられています。しかし、あくまでも価値と価格は異なるため、実際にこの価格で取引が成立するわけではありません。
理由としては、以下2つの要素が大きいです。
- 現在の不動産市況
- 不動産会社の利益
区分マンションのような不動産は一般的に流動性が低い資産といわれており、株式や債券などの金融取引ほど取引が成立する頻度が高くありません。さらに、一度の取引金額が非常に大きいため、個人であれば生涯でも取引を行うのは1〜2回でしょう。
不動産会社は、在庫リスクに対して非常に慎重な姿勢を取ります。特に、不動産会社が購入者として中古の区分マンションを買い取るときは、そのあと売却して収益を上げることが目的です。そのため、資産としての本質的な価値とされる積算価格ではなく、市場性を非常に重視しています。
- 現在どのくらいの価格で売買できそうなマンションなのか
- 仕入れから売却にかけてどの程度の利益を見込めるのか
- 在庫として抱えるリスクはないか
- どの程度の期間在庫となってしまったら安売りしてでも処分する必要があるか
周辺の取引事例から、上記などの観点で買取価格を検討するのが一般的です。
積算価格は売買において意味がないのか
では、区分マンションの売買取引において積算価格を知ることに意味がないのか、というとそうではありません。積算価格は不動産の本質的な価値に近しい価格であるため、重要な基準として機能することがあります。
たとえば、積算価格が3,500万円の区分マンションを売却したいと考え、近隣の取引事例を調査した際、類似物件で2,000万円、3,700万円、4,300万円の取引実績が確認できたとします。
この場合、2,000万円と4,300万円の取引実績には、通常の売買とは異なる経緯があった可能性が考えられます。よくある理由としては、売主が転勤などで一刻も早く売却したかった、買主が景観や住環境を気に入ってどうしてもその物件を購入したかった、などがありますが、いずれも主観的な経緯によるものです。
そうすると、積算価格3,500万円に事情補正や計算上の前提の違いなどを考慮した約3,300万〜3,700万円が、この物件の適正な売買価格の水準だと想定ができるでしょう。
前述したとおり、不動産は流動性が低いため、直近で近隣の取引事例が存在しない場合もあります。ひとつの基準として積算価格による価格水準を知っておくとよいでしょう。
マンションを専門に取り扱っている不動産会社に相談する
区分マンションの売買を検討した際、自身で積算価格を計算するのもよいですが、最も現在の市場動向に詳しいのはマンションの売買を専門に取り扱っている不動産会社です。
マンション専門の会社に相談すれば、より実際の取引価格に近い金額を計算してくれますし、その価格が割安か割高なのかのアドバイスもくれます。
また、売買を決めてからではなく、前もって話をしておけば、市況が動いた場合に売りどきや買いどきを逃さないよう随時情報提供を受けられるでしょう
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