投資マンション売却
投資マンションの売却タイミングを解説。売却価格の決め方や進め方も紹介
投資マンションを所有している方にとって、適切なタイミングで物件を売却することは、資産運用における重要な判断の一つです。売却のタイミングを誤ると、期待していた利益を得られない可能性もあります。正しいタイミングで売却できれば、利益を最大化し、新たな投資機会を得ることができるでしょう。
投資マンションの売却は、単に市場動向だけでなく、物件の状態や個人の事情など、様々な要因を考慮する必要があります。売却価格の設定や、具体的な売却方法の選択など、専門的な知識を要する場面も多くあります。
投資マンションの売却タイミングについて解説するとともに、売却価格の決め方や具体的な進め方についても詳しく紹介します。
目次
投資マンションの売却タイミング
投資マンションの売却タイミングを考える上で、以下のような点に着目することが大切です。
1. 金利が低い時
金利の動向は、不動産市場に大きな影響を与えます。金利が低い時は、借入コストが抑えられるため、投資マンションの購入需要が高まる傾向にあります。このような時期に売却を検討することで、より多くの潜在的な購入者を獲得できる可能性が高まります。
ただし、金利の動向は常に変化します。金利の上昇が予想される場合は、売却を急ぐ必要があるかもしれません。一方で、金利の下降傾向が続くと予想されるなら、しばらく様子を見るのも一つの選択肢です。市場動向を注視しながら、適切な判断を下すことが求められます。
2. 大規模修繕の前
マンションの大規模修繕は、建物の維持と資産価値の保全に不可欠な工事ですが、オーナーにとっては大きな費用負担となります。修繕積立金を長年にわたって積み立てていても、一時的に多額の出費が必要になるケースもあります。
約15年を周期とする大規模修繕の実施が近づいている場合、修繕費用の負担を避けるために、その前に物件を売却してしまうという選択肢もあります。ただし、修繕前の物件は、買主にとって修繕費用の負担が見込まれるため、売却価格は若干低めに設定せざるを得ないかもしれません。
反対に、大規模修繕が適切に行われることで、物件の資産価値が向上する可能性もあります。修繕後の物件は、建物の状態が良好になるため、売却価格を高く設定できる可能性があります。個々の物件の状況や、修繕の内容、費用対効果などを総合的に判断し、最適なタイミングを見定めることが大切です。
3. 築20年を迎える前に売却する
マンションの築年数は、物件の価値に大きく影響します。一般的に、マンションは築年数が経過するほど、その価値が下がっていく傾向にあります。特に、築20年を超えるあたりから、建物の老朽化が進み、設備の陳腐化も顕著になってきます。
ただし、築年数だけでなく、物件の立地や設備、管理状態なども売却価格に影響します。都心の人気エリアにあるマンションや、高級感のある内装、充実した設備を備えたマンションは、築年数が経過していても、一定の需要が見込めます。物件の個別の特性を踏まえつつ、売却のタイミングを検討することが大切です。
4. 1月~3月の入居者募集の好時期
投資マンションの売却を考える上で、入居者の需要動向も重要な要素の一つです。入居者の需要が高まる時期に売却することで、空室リスクを抑え、高い価格での売却が期待できます。
毎年1月から3月の時期に、学生の進学や社会人の転勤などに伴う住み替えの需要が増加します。この時期に売却を行えば、入居者を速やかに確保でき、安定した賃料収入を見込める物件として、購入者にアピールできるでしょう。
また、都市部では、外国人の入居需要も無視できません。外国人の入居需要が高まる時期に合わせて売却を検討するのも一つの戦略です。たとえば、多くの外国人が日本で就労を開始する4月や、留学生が入学する9月などは、外国人の入居需要が高まります。物件の立地や設備によっては、外国人の入居者を主なターゲットとすることで、売却価格の上昇を狙うことも可能かもしれません。
投資マンションを売却するために必要な準備
投資マンションの売却を成功させるには、事前の準備が欠かせません。ここでは、売却前に行っておくべき主な準備について説明します。
修繕・リフォーム
売却予定の投資マンションに修繕すべき箇所やリフォームの必要性がある場合は、売却前に対応しておくことが望ましいでしょう。老朽化した設備の更新や、壁紙の張り替え、フローリングの補修など、適切な修繕・リフォームを行うことで、物件の価値を高めることができます。
修繕・リフォームを行う際は、費用対効果を十分に検討する必要があります。必要以上に高額な工事を行っても、売却価格に反映されるとは限りません。物件の状態や、想定する購入者層のニーズを踏まえ、最適な修繕・リフォームの内容を吟味しましょう。
賃料の見直し
投資マンションの売却価格は、物件の収益性に大きく左右されます。高い賃料収入が見込める物件ほど、購入者にとって魅力的に映ります。売却前に賃料の見直しを行い、適正な賃料設定にすることで、物件の収益性を向上させることができるでしょう。
賃料の見直しに当たっては、周辺の賃貸市場の動向を把握することが重要です。同じエリアの類似物件の賃料相場を調査し、自身の物件の賃料水準が適切かどうかを確認します。賃料が相場よりも低い場合は、値上げを検討しましょう。ただし、急激な賃料の引き上げは入居者の反発を招く恐れがあるため、段階的に調整することが望ましいです。
また、賃料の見直しと併せて、入居者とのコミュニケーションを密にとることも大切です。賃料の値上げを行う場合は、事前に入居者に説明し、理解を得ておく必要があります。入居者との良好な関係を維持することで、物件の安定的な運営と、スムーズな売却につなげることができます。
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売却方法
投資マンションの売却方法には、主に仲介と買取の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、事情に合った売却方法を選択することが重要です。
仲介
仲介売却は、不動産仲介業者を通じて物件を売却する方法です。売主は仲介業者に物件の販売を依頼し、仲介業者が購入希望者を探します。仲介業者は、物件の広告・宣伝活動や、購入希望者の物件案内、売買契約の調整など、売却に関する一連の業務を担当します。
仲介売却のメリットは、広く購入者を募ることができるため、比較的高い価格で売却できる可能性がある点です。仲介業者のネットワークやノウハウを活用することで、多くの潜在的な購入者にアプローチできます。また、売却価格の交渉や契約手続きなど、専門的な業務を仲介業者に任せられるため、売主の負担が軽減されます。
一方で、仲介手数料がかかることや、買主が現れないと売却できないため、スケジュールが不明確である点などがあります。
買取
買取売却は、不動産業者が直接物件を購入する方法です。売主は不動産業者に物件を売却し、不動産業者がその物件を転売するという流れになります。買取業者は、リノベーションやリーシングなどを行い、物件の価値を高めてから転売することが一般的です。
買取売却の最大のメリットは、スピーディーな売却が可能な点です。売主と買取業者の間で直接取引が行われるため、仲介売却に比べて手続きがシンプルで、短期間での売却が実現しやすくなります。また、買取価格が事前に提示されるため、売却価格の確実性が高いというメリットもあります。また、仲介手数料も必要ありません。
ただし、買取売却には、売却価格が仲介売却に比べて低くなる傾向があるというデメリットがあります。買取業者は転売利益を見込んで物件を購入するため、市場価格よりも低い価格を提示する場合が多いのです。また、買取業者の選定には注意が必要です。悪質な業者に安値で買い叩かれるリスクもゼロではありません。
仲介と買取、どちらの方法を選ぶべきかは、物件の特性や売主の事情によって異なります。売却の優先順位や、物件の市場性、売却にかけられる時間など、様々な要素を考慮する必要があります。それぞれの売却方法のメリット・デメリットを十分に理解した上で、最適な選択をすることが大切です。
売却時の税金と費用
投資マンションの売却には、税金や各種費用が発生します。これらのコストを適切に把握し、売却益の試算に反映させることが重要です。ここでは、売却時の主な税金と費用について説明します。
ただし、費用のなかには必ずかかるものと、そうではないものがあります。そのため、自身の状況と照らし合わせて、必要な費用を売却の前に整理して、しっかりと資金計画を立てましょう。
費用の種類 | 費用が必須か否か |
---|---|
仲介手数料(仲介で売却する場合) | 必須 |
印紙税 | 必須 |
預かり敷金 | 必須 |
抵当権抹消費用 | 場合による |
住宅ローンの返済手数料 | 場合による |
管理中途解約違約金 | 場合による |
譲渡所得税 | 場合による |
それぞれの費用について、ひとつずつ詳しく解説します。
仲介手数料
仲介手数料は、仲介で物件の売却を不動産会社に依頼し、成約に至ったときに支払う報酬です。売却価格に合わせて法律で上限額が設けられており、上限の範囲内で請求されます。
売却価格 | 上限額 |
---|---|
200万円以下 | 売却代金×5% |
200万円超過~400万円以下 | 売却代金×4%+2万円 |
400万円超過 | 売却代金×3%+6万円 |
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書のような、課税対象の文書を作成したときにかかる税金のことです。該当文書に購入した印紙を貼り付け、消印することで納付したとみなされます。
契約金額 | 税額 |
---|---|
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
令和9年(2027年)3月31日までに作成される不動産売買契約書のうち、記載金額が10万円を超えるものは軽減措置が適用されます。上記の表は、軽減措置適用後の税額です。
預り敷金
入居者から敷金を預かっている場合、次の所有者である買主へ敷金を引き継がなければなりません。敷金は、万一のときに備えて入居者から一時的に預かっているお金で、所有者の資産ではないため、忘れずに買主へ渡しましょう。
抵当権抹消費用
抵当権抹消費用とは、ローンを組んで購入した際にその不動産に設定された抵当権を外すために必要な費用です。ひとつの不動産につき1,000円の費用がかかり、マンションであれば土地と建物のそれぞれにかかり、合計2,000円を支払います。
ローンの残債のある物件を売却し、その代金で残債を支払い、抵当権を抹消するケースなどでは、司法書士へ依頼するのが一般的です。司法書士へ依頼すると、依頼料として別途1万5,000円~2万円の費用がかかります。
ローンの返済手数料
ローンの残債を一括で返す際に発生する手数料です。相場は5,000円~3万円ほどで、利用している金融機関や返済方法によって金額が変わります。物件を売りに出す前に、金融機関に確認しておけば、スムーズでしょう。
管理中途解約違約金
管理会社に管理を依頼している場合、契約を途中で解約する際には、解約違約金の支払いが必要になることがあります。売却前に管理委託契約に関する書類をチェックしておきましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産売却で利益が発生したときに支払う税金です。所得税と住民税、復興特別所得税の3つの税金を指しています。
譲渡所得税は、物件の所有期間によって税率が変わる点に注意が必要です。所有期間が5年を超過している物件は20.315%(長期譲渡所得)、5年未満の物件は39.63%(短期譲渡所得)と約2倍の差があります。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
長期譲渡所得(5年超過の所有) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
短期譲渡所得(5年未満の所有) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
5年以上取得してから売却した方が、利益が出た際には税金の負担を抑えることができます。
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