不動産投資
アパートを売却するとどのような税金がかかる?計算方法や特例制度を解説
アパートを売却すると、売却益や諸手続きに対して税金がかかります。場合によっては多額の税金を納めなければならないこともあるため、どのくらいの税金がかかるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
アパートを売却したときにかかる税金の種類や、それぞれの計算方法、アパート売却時に注意したいポイント、アパートの買い換えに活用できる制度について解説します。
目次
アパートを売却するときにかかる税金
アパートを売却すると、以下4つの税金が課せられます。
- 譲渡所得税・住民税
- 印紙税
- 手数料にかかる消費税
- 登録免許税
ここでは、それぞれの税金の概要や計算方法について解説します。
譲渡所得税・住民税
譲渡所得税とは、土地や建物、株式などの資産を譲渡することによって生じる所得に課される税金のことです。
譲渡所得税は、課税譲渡所得額に一定の税率を乗じることで求められますが、税率は長期譲渡所得と短期譲渡所得で異なります。長期譲渡所得は譲渡した年の1月1日現在における所有期間が5年を超える土地・建物の売却によって得た所得のことで、税率は15%(住民税5%)です。
なお、2013年から2037年までの期間、各年分の所得税の2.1%を復興特別所得税として併せて申告・納付する必要があります。
一方の短期譲渡所得は譲渡した年の1月1日現在における所有期間が5年以内の土地・建物の売却によって得た所得のことで、税率は30%(住民税9%)です。こちらも長期譲渡所得税の場合と同じく、2013年から2037年までの期間、所得税の2.1%を復興特別所得税として納める必要があります。
課税譲渡所得額は以下の計算式で求められます。
譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡価額は土地や建物の売却価格、取得費は物件の購入費(所有期間中の減価償却費相当額を差し引いたもの)や購入手数料、譲渡費用は仲介手数料や売買契約書の印紙代など物件を売却するために要した費用を指します。
なお、特別控除はマイホームを売却した場合に適用される特別控除のことです。事業用不動産では適用外のため、気にする必要はないでしょう。
アパートを1,000万円で売却し、取得費が100万円、譲渡費用が50万円かかった場合、課税譲渡所得額は1,000万円-(100万円+50万円)=850万円となります。
このアパートの所有期間が5年超だった場合、課税譲渡所得額にかかる税金は次のように計算できます。
所得税額
850万円 × 15% = 127万5,000円
住民税
850万円 × 5% = 42万5,000円
復興特別所得税
127万5,000円 × 2.1% = 2万6,775円
所有期間が5年以内だった場合にかかる税金は次のとおりです。
所得税額
850万円×21%=178万5,000円
住民税
850万円×9%=76万5,000円
復興特別所得税
178万5,000円×2.1%=3万7,485円
※参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
※参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
印紙税
印紙税とは、日常の経済取引において作成する契約書や領収書などに課税される国税の一種です。課税文書は複数ありますが、アパートを売却する際に作成される売買契約書は、不動産等の譲渡に関する契約書(第1号文書)に該当するため、課税対象です。
印紙税は書面に記載された契約金額に応じて、以下のように定められています。なお、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成された契約書は、軽減措置が適用されます。ただし記載された契約金額が10万円以下の不動産譲渡契約書の場合は、軽減措置の適用はありません。
記載された契約金額 | 印紙税(円) | 軽減措置適用後の印紙税(円) |
---|---|---|
10万円以下 | 200 | 50万円以下は一律200円 |
10万円超50万円以下 | 400 | |
50万円超100万円以下 | 1,000 | 500 |
100万円超500万円以下 | 2,000 | 1,000 |
500万円超1,000万円以下 | 1万 | 5,000 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万 | 1万 |
5,000万円超1億円以下 | 6万 | 3万 |
1億円超5億円以下 | 10万 | 6万 |
5億円超10億円以下 | 20万 | 16万 |
10億円超50億円以下 | 40万 | 32万 |
50億円超 | 60万 | 48万 |
※参考:国税庁「印紙税の手引」
手数料にかかる消費税
手数料にかかる消費税とは、アパートを売却する際に利用した不動産仲介会社や司法書士に支払う手数料にかかる税金のことです。もし売却したアパートのローン残債を売却益で一括返済した場合は、ローン返済手数料も発生します。
このうち、特に税金が高くなりやすいのが不動産仲介手数料にかかる消費税です。仲介手数料は仲介会社が独自に定めるため一概にいくらと断言できませんが、宅地建物取引業法によって以下のように上限が定められています。
売却価格(税抜) | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格×5.5% |
200万円超400万円以下 | 売却価格×4.4% |
400万円超 | 売却価格×3.3% |
なお、上記の売却価格とは、物件の売却価格の総額を指したものではありません。売却価格のうち200万円以下の部分は売却価格×5.5%、200万円超400万円以下の部分は売却価格×4.4%をそれぞれ上限とした仲介手数料を徴収できるという意味です。そのため、アパートの売却価格が400万円を超えた場合は、200万円 × 5.5%+200万円×4.4%=11万円+8万8,000円=19万8,000円に、400万円を超えた部分×3.3%の手数料を足して計算することになります。
上記で求めた仲介手数料に消費税率を乗じて求めた金額を、消費税として納税します(実際は税込の金額を支払うため、売主が個別に消費税を納める必要はありません)。
司法書士に抵当権抹消手続きの代行を依頼した場合の手数料は司法書士事務所によって異なりますが、1万~2万円台が主流で、平均額は約1万7,000円とされています。
ローン一括返済手数料は金融機関が独自に定めているためばらつきがあるもの、相場は1万~3万円程度です。
※参考:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
※参考:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」
登録免許税
登録免許税とは、不動産や船舶、会社などについての登記や登録、特許などについて課税される税金です。
ローンが残っているアパートを売却するには、残債を一括返済し、抵当権を抹消しなければなりません。その際にかかるのが登録免許税で、不動産ひとつに付き1,000円を納税することになります。
なお、抵当権抹消手続きを司法書士に代行してもらう場合は、依頼する司法書士に登録免許税を渡せばOKです。
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アパートを売却し、新たな物件に買い換える際に利用できる制度
賃貸アパートを売却し、一定期間内に新たなアパートを購入して1年以内に賃貸を開始した場合、事業用資産の買い換えの特例が適用されます。
この特例が適用されると、売却価格より新たに取得した物件の購入額が多かった場合、売却価格に20%(課税割合は地域によって異なる)を乗じて求めた額を収入金額として譲渡所得の計算を行えるようになります。その結果、最大で80%の課税対象額を将来に繰り延べられるため、現時点での譲渡所得税の負担を抑えることが可能です。
なお、売却価格より買い換えに要した金額が少ない場合、その差額と、買い換え金額 × 課税割合を足した額を課税収入金額にできます。ただし、この特例を受けるためには以下すべての要件を満たす必要があります。
- 譲渡資産と買換資産の両方とも事業用のものであること
- 譲渡資産と買換資産が一定の組み合わせに当てはまること
- 買換資産が土地である場合、取得する土地の面積が譲渡した土地の面積の5倍以内であること(超過分は特例の対象外)
- 資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得し、必要な届出を提出すること
- 買換資産を取得した日から1年以内に事業に使うこと
- ほかの特例(長期譲渡所得の課税の特例や減価償却資産の特別償却など)を受けていないこと
- 土地の譲渡について、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていること
- 譲渡資産の譲渡が、収容や贈与、交換、出資、代物弁済としての譲渡ではないこと
2の組み合わせの代表的なものとして、譲渡日が属する年の1月1日において所有期間が10年を超える国内の事業用の土地や建物を譲渡し、国内の事業用の土地や建物を取得するケースなどが挙げられます。
事業用資産の買い換えの特例は、要件がかなり複雑です。アパートを売却後、すぐにほかのアパートに買い換える予定がある場合は、特例の適用可否について税務署に問い合わせることをおすすめします。
※参考:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」
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