不動産投資
相続したアパートを売却した際にかかる税金は?その他費用や節税方法、流れを解説
アパートを相続または売却すると、譲渡所得税や相続税などの税金を支払わなければなりません。税金や費用の仕組みを理解することで、負担を抑えつつ手続きをスムーズに進められるでしょう。
目次
相続したアパートを売却する際にかかる税金
両親などから相続したアパートを売却する際にかかる税金は、主に以下の3つです。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産などの売却で発生した利益に課される税金です。課税対象となるのは、売却価格から購入時にかかった費用、特別控除額を差し引いた金額です。計算式は以下の通りです。
- 売却価格 -(取得費用+譲渡費用)- 特別控除額 = 譲渡所得額
売却価格とは、アパートを売却したときに手元に入った金額を指しています。取得費用は、アパートの購入代や購入時の住人立退料などの費用のことです。譲渡費用には、売却で支払った仲介手数料、解体費用などが含まれます。
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」.
参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」
参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
譲渡所得の税率は、アパートの所有期間が5年経過しているかどうかで異なります。詳細は以下の通りです。
所有期間 | 区分税率 | 税率 |
---|---|---|
5年以内である | 短期譲渡所得 | 39.63% |
5年経過している | 長期譲渡所得 | 20.315% |
このように所有期間によって税率が異なるため、税負担を抑えるなら所有後5年経過してからのほうがよいでしょう。
参考:国税庁.「土地や建物を売ったとき」
譲渡所得税の節税方法
譲渡所得税の負担を軽減する方法のひとつに、取得費加算の特例があります。この特例は、相続した不動産を売却する際、相続時に支払った相続税の一部を取得費に加えることができる制度です。譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いて計算されるため、取得費が大きくなるほど課税対象となる所得が減少します。
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
ただし、取得費加算制度を適用するには、アパート相続開始日の翌日から3年以内に売却を完了する必要があります。詳しくは、国税庁のホームページにてご確認ください。
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書を作成する際に課される税金です。以下のように売却するアパートの契約金額によって税率が異なります。なお、令和9年3月31日までに締結した契約書の印紙税には軽減税率が適用されます。
参考:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
契約金額 | 税率 | 軽減税率(※令和9年3月31日の契約) |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万~10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万~50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万~100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億~10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億~50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円以上 | 60万円 | 48万円 |
登録免許税
登録免許税とは、不動産の登記手続きをする際にかかる税金です。不動産を相続したり、売却に伴って所有権を移転したりする場合に課されます。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額に税率をかけた金額で計算します。相続や合併による所有権移転登記では税率が0.4%、売買や贈与に伴う移転登記は2.0%です。
参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
また不動産をひとつ売却する際に抵当権を抹消する場合、登録免許税として1,000円かかります。
参考:国税庁「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」
相続したアパートを売却する際にかかる費用/h2>
相続したアパートを売却する際は、税金のほかに以下の費用がかかります。
費用 | 概要 |
---|---|
仲介手数料 | 不動産会社に支払う手数料
上限額は、宅地建物取引業法によって以下のように定められている
|
ローン返済にかかる手数料 | アパートの住宅ローンを一括返済するときにかかる手数料 |
手続きに伴う諸経費 | アパート売却時の測量や解体、クリーニング、書類の発行、ゴミ廃棄などにかかる諸経費 |
このように、税金のほかにも多くの費用がかかります。専門家や不動産会社と相談しながら手続きを進めましょう。
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相続したアパートを売却する際の流れ
相続したアパートの売却手続きは、以下の流れで進めていきます。
- 不動産会社にアパートを査定してもらう
- 査定結果や条件を確認し、不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 不動産会社がアパートの買主を探す
- 買主と売買契約を結ぶ
- アパートを買主に引き渡す
- 確定申告を行う
不動産会社を選ぶ際は、アパート売却の実績が豊富な会社を選びましょう。仲介の形態としては、一社の不動産会社の元で売却する専任媒介、複数の不動産会社に査定を依頼する一般媒介があります。売却をスムーズに進めるためには、一社が責任を持って買主を探してくれる専任媒介を選ぶのがおすすめです。
またアパートを買主に引き渡した後に発生した譲渡所得については、確定申告をする必要があります。確定申告の方法は、国税庁の「令和6年分譲渡所得の申告のしかた」を参照ください。
アパートを相続した際にかかる税金の種類
アパートを相続した際にかかる税金は、主に以下の通りです。売却時だけでなく、相続時の税金も知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
- 相続税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 贈与税
相続税
相続税とは、亡くなった両親などから不動産などの財産を受け継いだ際にかかる税金です。必ず支払うのではなく、受け継いだ財産総額が基礎控除額を上回った際に課されます。
基礎控除額は、以下の計算式で求めます。
- 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
財産総額から基礎控除額を差し引き、その残りの金額を相続人で分配します。その分配された金額に応じて、以下の税率が適用されます。
法定相続分に応ずる取得金額(分配金) | 税率 |
---|---|
1,000万円以下 | 10% |
1,000万~3,000万円以下 | 15% |
3,000万~5,000万円以下 | 20% |
5,000万~1億円以下 | 30% |
1億~2億円以下 | 40% |
2億~3億円以下 | 45% |
3億~6億円以下 | 50% |
6億円以上 | 55% |
参考:国税庁「No.4155 相続税の税率」
相続税の節税方法
相続税は、事前に適切な対策を講じることで負担を軽減できる場合があります。代表的な節税方法は、以下の通りです。
- 小規模宅地等の特例
- 所有地を貸家建付地にする
小規模宅地等の特例とは、相続した土地の評価額を減額できる制度です。たとえば、自宅として使われていた土地では80%、賃貸用の土地では50%減額できます。
参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
所有している土地に賃貸アパートなどを建てて貸付建付地にするのも、節税対策のひとつです。貸付建付地にすると、相続税の計算時に評価額が引き下げられて課税対象額が減少します。
参考:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」
登録免許税
売却時と同様、アパートの相続には登録免許税がかかります。登録免許税とは、不動産の所有権移転や登記手続きにかかる税金です。税率も売却時と同じで、相続や法人合併による所有権移転登記の税率は0.4%、売買や贈与に伴う場合は2.0%です。
参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際に課される地方税です。相続による取得の場合は課税対象外ですが、生前贈与の場合やや相続人ではない人が取得した場合に発生します。
税額は固定資産税評価額に標準税率4%をかけて計算しますが、現在は軽減税率の3%をかけて計算します。
参考:総務省「不動産取得税」
贈与税
贈与税とは、生前に個人から財産を無償で受け取った際に課される税金です。年間110万円までは非課税ですが、110万円を超えると贈与税を納める必要があります。
国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
相続税を納める場合、生前贈与による贈与税の発生で相続税を軽減できる可能性があります。また相続時精算課税制度を利用すれば、累計2,500万円までの贈与が非課税となり、相続時に財産を合算して税額を精算することも可能です。
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
アパートを相続した際にかかる費用
アパートを相続した際は、税金以外にも書類の発行料や専門家への依頼料などの諸経費が発生します。
相続手続きには、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などの書類が必要です。これらの発行には、数百円から数万円の手数料がかかります。また必要書類を役所に郵送する際の切手代、手続きのために役所や法務局に足を運ぶ際の交通費も発生します。
相続登記などの手続きは、司法書士に依頼するのが一般的です。依頼料として、4万~10万円程度の費用が必要です。
単体で見ると少額ですが、全体を通じて見ると意外に大きな負担となるケースがあるため、事前に必要な費用を見積もっておきましょう。
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