投資マンション税金
賃貸経営で収支内訳書(不動産所得用)の提出はなぜ必要?書き方も詳しく解説
賃貸経営を行っている方は、その年の不動産所得(家賃収入など)の確定申告が必要です。給与所得がある方でも、不動産所得が20万円を超えると申告の義務が生じます。
不動産所得の申告をする際は、確定申告書の提出と併せて、収支内訳書(白色申告の場合)を添付しなければなりません。国税庁の確定申告書等作成コーナーなどを利用し、不動産所得用の収支内訳書を作成しましょう。
確定申告において収支内訳書が必要な理由や、不動産所得用の収支内訳書の書き方を詳しく解説します。
目次
賃貸経営で収支内訳書はなぜ必要?
日本では、納税者が自ら所得金額と税額を計算し、管轄の税務署に申告する申告納税制度を採用しています。不動産所得がある方は、翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行い、所得税を納付しなければなりません。
確定申告の方法には、白色申告と青色申告の2種類があります。個人で賃貸経営を行っている場合、手続きが簡単な白色申告を選ぶ方も多いでしょう。しかし白色申告であっても、白色申告者の記帳制度・記録保存制度により、収支内訳書と呼ばれる書類の提出が必要です。
ここでは、確定申告における収支内訳書の役割や、提出義務がある理由について簡単に説明します。
収支内訳書は白色申告の際に提出する書類のこと
収支内訳書とは、その年の総収入金額や必要経費の内容を記載し、収支の内訳を明らかにするための書類です。
白色申告を行う際に、確定申告書に添付して提出します。青色申告をする方の場合は、収支内訳書ではなく青色申告決算書の提出が必要です。
収支内訳書の書式は、国税庁の確定申告書等作成コーナーか、様式・手引きのページから直接ダウンロードできます。収支内訳書は3種類あるため、申告する所得に合わせて書式を選びましょう。
収支内訳書の書式 | 申告する所得 |
---|---|
収支内訳書(一般用) | 事業所得・雑所得 |
収支内訳書(農業所得用) | 農業所得 |
収支内訳書(不動産所得用) | 不動産所得 |
不動産所得のある方は収支内訳書の提出義務がある
申告する所得によっては、収支内訳書の提出義務が生じます。以下のいずれかの不動産所得がある方は、収支内訳書の提出が必要です。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 借地権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
参考:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
収支内訳書を提出しなければならない理由は、白色申告者の記帳制度・記録保存制度があるからです。
記帳制度 | 収入金額や必要経費に関して、取引の年月日、相手方の名称、金額などを帳簿に記載する
※取引1件ずつではなく、合計金額をまとめて記載するなど、簡易的な方法での記帳も可能 |
---|---|
記録保存制度 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿のほか、取引に関連する帳簿や棚卸表、請求書、領収書などの書類を決められた期間保存する
※法定帳簿は7年間、任意帳簿は5年間、その他の書類は5年間の保存が必要 |
記帳制度・記録保存制度の対象となるのは、不動産所得がある方のほか、事業所得や山林所得がある方です。
対象者は確定申告書を提出する際に、収支内訳書(総収入金額や必要経費の内訳が分かるもの)を添付しなければなりません。令和4年以後は、前々年の雑所得(事業所得に当てはまらないもの)が1,000万円を超える方も、収支内訳書の提出が必要です。
参考:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
1年間(1月1日から12月31日まで)の所得金額を正しく申告するためにも、日々の取引の状況を正確に記帳し、帳簿類を保存しましょう。
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不動産所得用の収支内訳書の書き方
不動産所得用の収支内訳書は、ほかの収支内訳書と同様に二枚つづりになっています。1ページ目には必要経費の各科目や、不動産所得の収入の内訳などを記入し、2ページ目には減価償却費の計算や、借入金利子などの内訳を記入する必要があります。
ここからは、不動産所得用の収支内訳書の書き方を項目別に見ていきましょう。
- 必要経費の各科目
- 不動産所得の収入の内訳
- 減価償却費の計算
1. 必要経費の各科目
1ページ目の左側には、必要経費の各科目を記入する欄があります。記入すべき科目は、給料賃金(従業員がいる場合)、建物・設備などの減価償却費、貸倒金(未回収の家賃がある場合)、住宅ローンなどの借入金利子、固定資産税などの租税公課、損害保険料などです。
各科目の具体例は、国税庁が作成した「収支内訳書(不動産所得用)の書き方」で確認できます。
科目 | 具体例 |
---|---|
給料賃金 | 賃貸している建物などの管理や家賃の集金などに従事する従業員に支払う給料 |
減価償却費 | 賃貸している建物や設備、その他の構築物などの償却費 |
貸倒金 | すでに収入金額として計上した貸料などのうち、回収不能となった金額 |
地代家賃 | 賃貸している建物の土地の賃借料 |
借入金利子 | 賃貸している建物などの取得に要した、借入金の利子の部分 |
租税公課 | 賃貸している土地や建物に関連した、固定資産税や事業税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金 |
損害保険料 | 賃貸している建物の火災保険料など |
修繕費 | 賃貸している建物などの修繕費用 |
雑費 | 業務上の費用で、その他の経費に当てはまらないもの |
2. 不動産所得の収入の内訳
不動産所得の収入の内訳の欄には、賃貸している土地や建物ごとに用途や所在地、契約期間、貸付面積などを記入し、それぞれの収入金額を示します。収入金額は、賃貸料や礼金・権利金・更新料、保証金・敷金などの項目に分かれています。各項目の収入金額を合計し、必要経費の各科目の欄の上部にある「収入金額」に転記しましょう。
この欄に記入すべき項目の具体例は、以下の通りです。
貸家、貸地等の別 | 貸家、貸店舗、アパート、貸マンション、貸間、貸地、駐車場など、賃貸している不動産の種別 |
---|---|
用途(住宅用、住宅用以外等の別) | 賃貸している建物がある場合は、住宅用・住宅用以外・店舗併用住宅などの用途 |
賃貸契約期間 | 契約開始の年月(契約更新のときは、その年月)および契約終了の年月 |
本年中の収入金額 | 賃貸料(家賃など)や、礼金・権利金・更新料、名義書換料などの金額 |
保証金・敷金 | 賃借人からの預り金がある場合は、保証金や敷金などの金額 |
参考:国税庁「令和6年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」
1ページ目に書き切れない場合は、別途用紙を用意し、収支内訳書に添付しても構いません。
3. 減価償却費の計算
2ページ目には、減価償却費の計算を記入します。減価償却資産ごとに名称や取得年月、償却方法、耐用年数などを記入し、それぞれの減価償却費がいくらになるかを計算します。この欄で償却費の合計金額を計算してから、1ページ目の必要経費の各科目の欄に転記するとよいでしょう。
この欄に記入すべき項目の具体例は、以下の通りです。
取得価額(償却保証額) | 建物や設備を取得した際の金額 |
---|---|
償却方法 | 定額法や定率法など、税務署に届け出ている償却方法
※届け出ていない方は、定額法と記入する |
償却の基礎になる金額 | 定額法の場合は取得価額、定率法の場合は前年末の未償却残高を記入
※定率法でも本年中に資産を取得した場合は、取得価額そのままの金額を記入 |
耐用年数 | 国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」を参照して記入 |
償却率または改定償却率 | 国税庁の「減価償却資産の償却率等表」を参照して記入 |
本年中の償却期間 | 月の途中で取得や譲渡、取壊しなどをした場合も、1カ月として計算 |
本年分の普通償却費 | 償却の基礎になる金額×償却率または改定償却率×本年中の償却期間で計算 |
参考:国税庁「令和6年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」
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