
不動産投資
アパート売却の査定価格はどう決まる?計算方法や高く売るコツも解説
アパートの売却価格は、建物の築年数や劣化具合、設備の状態などにより決まります。
売却前に各項目の状況を確認し、必要に応じてメンテナンスや改善を行うことで査定価格の向上が期待できます。
アパート売却における査定価格の決まり方や計算方法、売却価格を高くするコツを紹介します。
高値で売却するためにも、売却時期の見極め方やポイントを押さえましょう。
目次
アパートを売却する際に用いる査定方法
アパートを売却する際に用いられる査定方法は、主に以下の3つです。
- 原価法:物件の原価から劣化部分を差し引いて査定価格を算出する方法
- 収益還元法:物件の収益性に応じて査定価格を算出する方法
- 取引事例比較法:過去の売却事例を基に査定する方法
原価法
原価法は、売却するアパートと同じ土地に新たな建物を建てる際の費用(原価)から、経年劣化による価値の劣化分を差し引いて査定価格を算出する方法です。
原価法の計算方法
原価法で査定価格を算出するには、建物と土地の価格を知る必要があります。建物と土地の価格は、以下の計算式で算出できます。
- 建物評価価格:再調達価格×延べ床面積×残りの耐用年数÷法定耐用年数
- 土地価格:不動産市場の価格(公示地価、実勢価格など) × 土地面積 × 1.1
土地価格は、相続税路線価、公示地価、実勢価格を参考に査定されることが一般的です。
国土交通省の公示地価方式や、各都道府県が定める基準地価方式が用いられるケースもあります。
原価法を利用した建物評価価格の計算方法
原価法を利用して建物評価価格を割り出してみましょう。
再調達価格が1平米あたり15万円、延べ床面積が200m²、法定耐用年数が22年、残りの耐用年数が10年ある物件の建物評価価格の計算式は以下の通りです。
- 15万円×200m²×10÷22=約1,364万円(建物評価価格)
最終的な査定価格は、建物評価価格に土地価格を加算し、市場価格なども考慮してください。
土地価格は、評価方法によって異なるため、どの基準を用いるかによって査定価格が変わります。
収益還元法
収益還元法とは、年間の収益性に応じて査定価格を決定する方法です。主に以下の2つの算出方法が適用されます。
- 直接還元法
- DCF法
直接還元法
直接還元法とは、不動産の収益力を基に価値を評価する方法です。
査定価格は、以下のように年間の純利益を還元利回りで割って算出します。
- 年間純利益÷還元利回り=査定価格
たとえば、家賃5万円の部屋が4室あるアパートで、年間の管理費が30万円、還元利回りが5%の場合、査定価格は以下のように算出できます。
- 5万円×4室×12カ月(1年間)-30万円÷5%=4,200万円
このように、年間の総賃料収入から管理費を差し引いた額(純収益)を還元利回りで割ることで算出可能です。
DCF法
DCF法とは、不動産が将来生み出す収益を割引率を用いて現在価値に換算し、査定価格を算出する方法です。
将来の収益は市場環境やリスクによって変動するため、DCF法では割引率を用いてより実態に近い不動産価格を算出できます。
具体的には、将来得られる収益を「現在価値」に換算し、査定価格を決定します。
査定額をDCF法で計算する方法
具体的な計算方法は、以下の通りです。
- 年間のフリーキャッシュフロー÷(1+割引率)^n=現在価値 (^n=累乗)
たとえば、先ほどと同じ家賃5万円の部屋が4室あるアパートで、年間の管理費が30万円、5年後の売却価格が4,000万円、割引率が3%のケースでは、以下のように算出します。
- 5万円×4戸×12カ月-30万円÷(1+0.03)^1=203.88万円
- 5万円×4戸×12カ月-30万円÷(1+0.03)^2=197.95万円
- 5万円×4戸×12カ月-30万円÷(1+0.03)^3=192.18万円
- 5万円×4戸×12カ月-30万円÷(1+0.03)^4=186.58万円
- 5万円×4戸×12カ月-30万円÷(1+0.03)^5=181.15万円
- 1~5年目の現在価値の合計:961.74万円
1〜5年目の現在価値の合計は961.74万円です。
5年後の売却価格をDCF法で計算する方法
5年後の売却価格の4,000万円を現在価値に変換します。
計算式は、以下の通りです。
- 4,000万円÷(1+0.03)^5=3450.43万円
最後に、1~5年目までの現在価値の合計と先ほど求めた5年後の売却価格を合算します。
- 961.74万円+3,450.43万円=4412.17万円
つまり、DCF法で求めた査定価格は約4,412万円です。
なお、アパートを6年目以降も継続する場合、ターミナルバリューを用いてフリーキャッシュフローを求めます。
「ターミナルバリュー」とは、DCF法において、予測期間終了後の不動産の残存価値を評価するための指標です。
6年目以降は将来的な利益を予測しにくい期間のため、予測期間終了の最終年度(5年目)のフリーキャッシュフローを基に不動産価値を算出します。
取引事例比較法:過去の売却事例を基に査定する方法
取引事例比較法とは、過去の売却事例を基に査定価格を算出する方法です。
同じ地域・条件の不動産がどのくらいの価格で取引されたかを基準にするため、市場の実勢価格に近い査定ができます。
主に居住目的で所有している不動産の価値を決める際に適用される方法のため、賃貸目的のアパート売却ではあまり用いられません。
アパート売却の査定価格を決める基準とは?
アパートの売却の査定価格は、主に以下の項目で変動します。
- 入居率
- 築年数
- 立地条件
- 家賃滞納者の割合
- 設備・建物の修繕状況
入居率
入居率が高いほど安定した家賃収入が得られるため、査定価格も高くなります。
反対に空室が多いアパートは収益性が低いと判断され、査定価格が下がる可能性があります。
そのため売却前に空室対策を行い、できるだけ入居率を上げておくのが重要です。
また長期間にわたって安定した入居率が維持されている場合、収益性が高い物件と判断されやすく、査定価格が上がる可能性があります。
築年数
築年数が経過するほど、アパートの査定価格は下がる傾向にあります。
築浅物件は室内や設備の状態が劣化していないことから、購入希望者が多く査定価格が高く付きやすいからです。
一方、築年数が経過していると建物の老朽化が進み、修繕費用の増加や耐震基準の違いなどから購入を避ける方もいます。
ただし、大規模なリフォームや設備の交換が行われている場合は、築年数が古くても査定価格が下がらない可能性があります。
立地条件
立地条件は査定価格を左右する項目の1つです。
駅やバス停へのアクセスがよい物件、商業施設や学校が近いエリアの物件は需要が高く、査定価格が高い傾向にあります。
一方、交通の便が悪い場所やスーパーや病院などの施設が少ないエリアでは、入居者の確保が難しくなり、査定価格が下がる可能性があります。
家賃滞納者の割合
家賃滞納者が多い物件は、査定価格が下がる傾向にあります。滞納者が多いと収益の安定性が低いと判断され、市場での評価が下がります。
家賃滞納者がいる場合は、入居者と早めに話し合い、解決策を講じましょう。
設備・建物の修繕状況
設備や建物の修繕状況も、査定価格に関わる重要な要素です。
外壁や屋根の劣化、共用部分の損傷、給排水設備の老朽化などが進んでいると、修繕費がかかると判断され、査定価格が下がる可能性があります。
売却前に必要の範囲の修繕やメンテナンスを行い、物件の状態をできるだけ良くしておきましょう。
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アパート売却で査定価格をできるだけ高くするコツ
アパートをできるだけ高く売却するためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 売却時期を見極める
- 利回りを上げた状態で査定依頼をする
それぞれ詳しく解説していきます。
売却時期を見極める
アパートの売却時期を適切に見極めることで、査定額が高くなる可能性があります。
不動産市場は季節や経済状況によって変動するため、需要が高まるタイミングを狙うのが重要です。
具体的に売却に適した時期は、以下の通りです。
- 入居率が安定しているとき
- 周辺で都市開発が進んでいるとき
- 減価償却期間が終わって課税所得が増えるとき
- 大規模な修繕時期にさしかかっているとき
これらの物件需要が高い時期に売却すると、査定価格が上がりやすくなります。
また、減価償却期間が終了すると建物の購入費を経費計上できなくなるため、税負担を抑えるためにも売却を検討しましょう。
利回りを上げた状態で査定依頼をする
物件の利回りが高い状態で査定依頼をすると、査定でより高い評価を得られる可能性があります。
不動産の利回りは、買手が物件を購入する際の重要な判断基準の1つです。
高い利回りを維持している物件は、魅力的な投資対象として査定価格が上がりやすいです。
そのため、売却前にできるだけ空室をなくしたり、設備のメンテナンスを行ったりするなどの物件の魅力を高める工夫をしましょう。

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