
投資マンション税金
不動産は相続税対策になる?節税できる仕組みやメリット・デメリットを解説
相続税の負担を軽減する方法として、不動産投資が注目されています。
不動産は現金のまま相続するよりも相続税評価額を抑えられるため、節税効果が期待できるのが大きなメリットです。
一方、不動産投資は売却時の手間や管理コストがかかるなど、さまざまなデメリットがあります。
不動産を活用した相続の仕組みを分かりやすく解説し、メリット・デメリットについても説明していますので、参考にしてください。
目次
不動産で相続対策できる仕組みを分かりやすく解説
結論として、不動産の活用による相続税の節税対策は可能です。この章では不動産によって相続対策ができる理由について詳しく解説します。
相続税とは?
相続税とは亡くなった人の財産を相続や遺贈によって取得した場合に課せられる税金です。相続税の課税対象は以下の方法で計算します。
- 相続等によって取得した財産の総額から負債・葬式費用を差し引く
- 1の額に加算対象となる暦年課税による贈与財産の価額を加算し、正味の遺産額を求める
- 正味の遺産額から相続税の基礎控除額を差し引く
3によって算出された金額が課税遺産総額です。相続税は課税遺産総額に対して課せられます。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。正味の遺産額が基礎控除額以下の場合は課税遺産総額が発生しないため、相続税もかかりません。
相続税が発生する仕組み
相続財産等に相続税が課せられる理由は大きく2つあります。
1つは所得税を補完するためです。
相続財産は、被相続人が生前に受けた税制上の特典によって税負担が軽減したことで蓄積された面もあります。相続税はこれらの財産を清算する機能、すなわち所得税の補完機能を有します。
2つ目の理由は富の集中を抑制するためです。
相続によって高額の財産を取得した者から相続税を徴収することで、相続した者とそうでない者で財産保有状況に大きな差が生まれるのを防ぎます。また、特定の者に富が過度に集中するのを防ぐ目的もあります。
不動産以外の相続対策
不動産以外に多く実施される相続対策として以下の例が挙げられます。
- 生前贈与の実施
- 控除や特例制度の活用
- 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠の活用
- お墓や仏具など非課税財産の購入
相続税の節税対策には多くの選択肢があるため、上手く活用すれば税負担を大幅に押さえられる可能性があります。
相続対策で不動産の取得が効果的な理由
相続対策で不動産の取得が効果的な理由は、同額の預貯金を相続するよりも不動産に代えた方が相続税評価額を減額できるためです。
また、数ある相続対策の中でも実施方法がわかりやすい点もメリットといえます。以下は不動産の取得による相続対策とそれ以外の方法の特徴をまとめた表です。
具体的な方法 | 注意点 | |
---|---|---|
不動産の取得 | 不動産の相続税評価額は購入価額や時価よりも低くなるという仕組みを活用する | 現金化に時間がかかる恐れがある等 |
生前贈与 | 生前贈与により相続税の課税対象になる財産を減らす | 相続開始前3年以内の暦年課税による贈与は相続財産に加算が必要 |
控除や特例制度の活用 | 適用対象となる相続税の控除や特例制度を漏れなく活用する | ケースによっては活用できる制度が少ない可能性がある |
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠の活用 | 「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を活用する | 非課税枠の活用には要件があるため注意が必要 |
お墓や仏具など非課税財産の購入 | 生前に墓石・墓地・仏具等の非課税財産を購入し、相続財産から差し引ける額を増やす | 相続の発生後に購入した分や、投資用とみなされたものは対象外 |
不動産取得は他の手法に比べて方法がシンプルかつ確実な効果が期待できる方法です。他にも多くのメリットがあるため、相続対策の方法として高い人気を誇ります。
相続対策に効果的な不動産の特徴
相続対策に効果的な不動産の特徴として、以下の3つが挙げられます。
- 被相続人の自宅用や事業用の宅地:小規模宅地等の特例の対象となり、相続税評価額の最大80%を減額が可能です(限度面積330㎡まで)
- 賃貸物件:相続税評価額の計算に際して、賃貸部分は評価額から控除できます
- 流動性が高く換金しやすい不動産:不動産の売却がしやすいため、まとまった現金を確保できる可能性が高いです
不動産を購入して終わりではなく賃貸物件として活用することで、より大きな節税効果を得られます。
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不動産で相続対策した場合のメリット
不動産で相続対策した場合のメリットについて詳しく解説します。
相続税評価額を減額できる
不動産の活用による最も大きなメリットは、相続税評価額を減額できる点です。
相続税評価額とは遺産総額を計算する際に用いる財産の価額です。相続税の課税の公平を図るため、不動産の購入価格や時価ではなく、相続税評価額を使うことが定められています。
不動産の相続税評価額は、一般的に購入価格(時価)の約70〜80%程度に設定されるため、現金で相続するよりも2〜3割は低く抑えることが可能です。
たとえば、不動産の購入価格が1億円の場合、当該不動産の相続税評価額は7,000〜8,000万円ほどになるでしょう。
一方、現金はすべて課税対象となるため、相続した場合は1億円全額が相続税の対象になります。
以上を踏まえて、同じ額の現金をそのまま相続するよりも不動産に代えて相続した方が相続税を抑えられるのです。
相続税を納税する現金を確保しやすい
相続対策に不動産を活用することで、相続税を納税する現金を確保しやすくなる効果も期待できます。理由として以下の2つが挙げられます。
- 相続によって取得した不動産を売却すればまとまった資金を確保できる
- 賃貸物件として活用すれば家賃収入を得られる
相続税は現金での一括納付が原則です。相続税の額によっては相続人の税負担が重くなりすぎる恐れがあります。相続税が高額になる恐れがある場合は、納税資金を確保するための手段をとるのが理想です。
不動産投資なら資産形成をしながら節税できる
購入した不動産を収益物件として活用すれば、家賃収入による資産形成と、不動産評価額の仕組みを活用した節税の両方が可能です。
なお賃貸物件は、相続税評価額の計算時に借家権割合や借地権割合に応じて評価が引き下げられるため、評価額が低くなります。
購入した不動産を被相続人自身や家族が使うのではなく、不動産投資に活用した方が大きな節税効果を得られます。
国の特例制度を利用できる
不動産の相続時には以下のようにさまざまな特例制度の活用が可能です。
制度の名称 | 特徴 |
---|---|
小規模宅地等の特例 | 相続した宅地等が被相続人または一定の要件を満たす親族の自宅・事業に用いられていた場合、相続税評価額を最大80%減額できる |
個人版事業承継税制 | 事業用資産にかかる相続税や贈与税の納税を猶予や免除を受けられる |
法人版事業承継税制 | 後継者である相続人や受贈者が非上場株式を取得した場合、当該株式にかかる相続税や贈与税の納税猶予や免除を受けられる |
現金のまま相続した場合は、上記のような特例制度の適用を受けられません。税額を最小限に抑えるためには、不動産のような特例を活用しやすい財産を取得するのが効果的です。
不動産で相続対策した場合のデメリット
不動産を活用した相続対策はメリットだけではなく、デメリットやリスクがあるため詳しく解説します。
不動産の売却は時間がかかることがある
前章で不動産のメリットとして「相続税を納税する現金を確保しやすい」を挙げました。不動産を売却すればまとまった現金が手に入るため、納税資金に関する負担の軽減を期待できます。
ただし、不動産の売却はすぐにできるとは限りません。相続税の支払いに充てたくても、不動産をすぐ現金化できない可能性があります。
また、小規模宅地等の特例は「その宅地等を相続税の申告期限まで有していること」が要件となります。そのため小規模宅地等の特例を適用する場合は、不動産の売却によって納税資金を得る方法は不可能です。
賃貸経営は労力や修繕費がかかる
不動産を活用した節税対策の効果を高めるという意味では、対象の不動産で賃貸経営を行うのが理想です。賃貸経営をすれば相続対策と資産形成の両方が実現します。
ただし賃貸経営は労力がかかるため、想定以上の負担が生じる恐れがあります。また、修繕費をはじめとした各種経費の支払いも必要です。
節税効果よりも支出や負担の方が大きくなる恐れがある点に注意する必要があります。
売却価格によっては追徴課税のリスクがある
不動産の相続税評価額は購入価格の6〜7割程度になるのが一般的です。
しかし相続税法第22条では、相続財産の評価額について以下のように定められています。
「この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。」
つまり、相続税評価額は原則として路線価や固定資産税評価額を基準に算出しますが、意図的に時価と著しく乖離した評価をした場合、追徴課税を受けるリスクがあるということです。
そのため、評価方法に不安がある場合や金額の差が極端に大きいと感じた際は、相続税評価額の計算方法に問題がないか専門家に確認してもらうと確実です。
遺産分割でトラブルになる恐れがある
不動産は複数人での分割が難しい上、すぐに現金化できるとは限りません。
そのため複数の相続人がいる場合、相続財産に不動産が含まれていると遺産分割でトラブルになる恐れがあります。
特に、不動産以外の相続財産が少ない場合や、不動産とその他の相続財産の金額差が大きい場合に注意が必要です。

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