
投資マンション税金
不動産投資の節税の仕組みとは?対象となる税金の種類や損するケースも解説
不動産投資を活用した相続対策は、近年注目されている節税方法のひとつです。
しかし、正しい知識がないまま始めてしまうと、かえって損をしてしまうケースもあります。
不動産投資がなぜ節税につながるのか、その仕組みや対象となる税金の種類、具体的な節税方法をわかりやすく解説します。
目次
不動産投資でなぜ節税できるのか
はじめに、不動産投資によって節税ができる理由について詳しく解説します。
不動産投資で節税できる税金の種類
不動産投資によって節税できる税金として以下の4つが挙げられます。
税金の種類 | 特徴 |
---|---|
所得税 | 個人の所得に対してかかる |
住民税 | 課税所得をもとに算定する所得割と、すべての住民に課せられる均等割の2つから構成されている |
相続税 | 相続や遺贈によって取得した財産にかかる |
贈与税 | 贈与(遺贈や死因贈与を除く)によって取得した財産にかかる |
不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資が節税につながるのは、課税対象額を抑えられるためです。
所得税や住民税の税額は収入から経費を差し引いた所得額をもとに計算します。不動産投資では高額の経費が発生するため所得が少なくなりやすく、税負担を抑えやすいです。
また、不動産を相続や贈与によって取得した場合、一定のルールに基づいて計算した評価額が課税対象になります。相続税や贈与税の計算時に用いる不動産評価額は、時価や購入価格より3〜4割程度は下がるのが一般的です。
現金をそのまま相続・贈与するよりも、同じ額の不動産を購入した方が課税対象になる評価額を抑えられる仕組みといえます。
不動産投資の節税に向いている人
不動産投資による所得税・住民税の節税対策が効果的なのは、課税所得が900万円を超える人です。理由として、所得税の仕組みが挙げられます。
課税所得900万円超の場合、通常は所得税の税率が約33%となります。
一方、不動産売却時に課せられる譲渡所得税の税率は、所有期間が5年超の場合で約20%(所得税15%+住民税5%)です。
通常の税率と譲渡所得税率の差が大きいため、課税所得が900万円超の人は不動産投資による節税効果が大きいといえます。
ただし、所有期間が5年以下の場合は約39%(所得税30%+住民税9%)と高くなるため、不動産の所有期間には注意が必要です。
不動産投資の節税にならない人
「不動産投資の節税に向いている人」とは反対に、課税所得が900万円以下の場合は不動産投資による節税効果はあまり大きくありません。
課税所得が900万円以下では通常の税率と譲渡所得税率の差が小さいためです。
また、不動産投資による相続税の節税対策が向かない人もいます。それは、相続財産が基礎控除額以下に収まる場合です。
相続税の基礎控除額は以下の式で計算します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続財産の額が相続税の基礎控除額以下に収まる場合は相続税が発生しません。
現金のままで相続しても相続税がかからないため、相続財産を減らす目的で不動産を購入する意味はないといえます。
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不動産投資で節税するための具体的な方法
続いて、不動産投資で節税するための具体的な方法を紹介します。
損益通算を利用する
損益通算とは所得金額の計算によって発生した損失を、総所得金額の計算時に控除できる仕組みです。
以下の4種類が損益通算の対象になります。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
たとえばサラリーマンが副業で不動産投資を行い、不動産所得が赤字となった場合、不動産所得の赤字と給与所得の相殺が可能となります。
課税所得が減るため結果として所得税や住民税の節税につながるのです。
減価償却費を計上する
減価償却とは時間の経過によって価値が減少する固定資産の購入価額を、定められた耐用年数に応じて分割して費用計上することです。
減価償却によって計上する費用のことを減価償却費といいます。建物は減価償却の対象のため、不動産投資では減価償却費が発生します。
建物は購入価額が高額なため、計上できる減価償却費も高額になりやすいのが特徴です。減価償却費を適切に計上することで所得が少なくなり、所得税や住民税を抑えられます。
法人化して節税する
不動産投資の規模が大きく所得も高額な場合、法人化による節税対策も効果的です。
所得税は所得が一定額を超えた部分により高い税率が適用される超過累進課税制度を採用しています。前述のように課税所得が900万円を超えたときに適用される税率は33%です。
一方で資本金1億円以下の法人に適用される税率は、所得800万円までの部分は15%、年800万円を超える部分は23.2%です。
所得が高額になると所得税より法人税の方が適用される税率が低くなるため、法人化により大きな節税効果が期待できます。
青色申告を活用する
青色申告とは一定のルールに基づく記帳を行い、その記帳に基づいた確定申告をする場合に、税金面でさまざまな特典を受けられる制度です。
青色申告の最も大きなメリットは青色申告特別控除として、65万円・55万円・10万円のいずれかの控除を受けられることです。
青色申告にはほかにも以下のようなメリットがあります。
- 損失を最大3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費計上できる
- 30万円未満の固定資産は法定耐用年数での減価償却ではなく、購入した年に一括で経費計上できる
所得税や住民税を節税するには、青色申告の適用は不可欠といえるでしょう。
不動産評価額を下げられる
不動産評価額を下げることは、相続税や贈与税の節税につながります。
不動産は購入価格(時価)ではなく、国税庁が定めた「路線価」や「固定資産税評価額」を基準として評価されるため、一般的に時価よりも3〜4割程度は低く評価されます。
そのため、現金で相続や贈与をするよりも、同じ金額で不動産を取得した方が相続税や贈与税の節税になるのです。
不動産評価額を下げる方法は他にも複数存在します。
- 不動産を賃貸物件とする:賃貸部分を評価額から控除できるため節税に効果的です
- 小規模宅地等の特例(相続税):被相続人の自宅用や事業用の宅地等を相続した場合、評価額を最大80%減額できる制度です
被相続人が居住していた自宅用の不動産は最大80%(330㎡まで)評価額が減額されます。
一方、貸付事業用宅地の場合は最大50%(200㎡まで)の減額が可能です。不動産評価の仕組みや特例制度を上手く活用し評価額を下げることで、相続税や贈与税を節税できます。
不動産投資の節税で失敗しないためのポイント
不動産投資における節税対策で失敗しないために押さえたいポイントを3つご紹介します。
不動産の耐用年数が過ぎる前に売却する
不動産投資による損失を避けるには、不動産の耐用年数が過ぎる前に売却すべきです。耐用年数は年数を重ねるごとに減価償却費が大幅に少なくなり、節税効果が薄れていきます。
経過後は事業用として利用し続ける場合、備忘価額として1円を残すことができますが、実質的に減価償却費として計上はほぼできません。
減価償却費の計上がなくなることで課税所得が増え、支払う税金も増えてしまう恐れがあります。また、耐用年数が過ぎた物件は売却価格が高値になりにくい傾向です。
したがって耐用年数を過ぎてしまうと、減価償却費の計上が難しい上に売却による収入も見込めないという恐れがあります。
以上のリスクを避けるためには、不動産の耐用年数が過ぎる前に売却するのが理想です。
青色申告に対応しているか確認する
前章の「青色申告を活用する」で、青色申告であれば青色申告特別控除により65万円・55万円・10万円のいずれかの控除を受けられると紹介しました。
しかし、不動産投資で65万円の控除を受けるには以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 不動産の貸付が事業規模である(アパートやマンション等の集合住宅では10室以上、一戸建ての場合は5棟以上)
- 複式簿記による記帳をする
- 確定申告書とあわせて青色申告決算書を期日までに提出する
- e-Taxによる確定申告または優良な電子帳簿の保存の要件を満たす
※4以外の要件を満たす場合は55万円の控除が適用される。
事業規模の要件を満たさない場合の控除額は10万円です。同じ青色申告でも、事業規模を満たすか否かで控除額が全く異なります。
必ず65万円の控除が適用されると思い込んでしまうと、想定以上の税金となってしまうでしょう。そのため青色申告の要件については事前に十分な確認が必要です。
節税対策することを目的にしない
不動産投資を行うにあたって、節税対策を目的にするのは避けましょう。特に所得税や住民税の節税を目的にするのは危険です。
不動産投資によって所得税や住民税の節税ができるのは、不動産投資による所得が少ない場合です。特に不動産所得がマイナスの場合は損益通算が可能なため、課税所得が減り税負担も軽減できます。
しかし、不動産所得が赤字または少ない状態は、不動産投資の成果が出ていないことを意味します。たとえ税額を減らせたとしても、多大な労力をかけても収益を得られないのでは本末転倒です。
不動産所得を抑えるための節税対策はすべきですが、結果的に赤字になった場合には損益通算を行うとよいでしょう。不動産投資は節税対策が目的ではなく、あくまで手段の一つであることを理解しておく必要があります。

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