専任媒介になると、不動産会社は1社だけですが、売主自身で買主を探すこともできます。そして一般媒介は、もうなんでもありという感じで、複数の不動産会社に依頼することもできますし、売主自身で買主を探すこともできます。
売主の置かれている状況によって、どの媒介契約がよいかというのは変わりますが、不動産の売買に慣れていない方が一般媒介を選ぶと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。例えば、ある会社と話が進んでいるところに、後発の業者が「もっと高い金額で決まるかもしれないから待ってください」と言ってきて、商談をストップさせるのですが、実際にはそんな話はなく、売却が長期化してしまうと言った事例もあります。
また、一般媒介の場合、複数の会社に依頼していても、最終的に契約できるのは1社だけなんです。そうすると、他の会社は手数料が入らないことになりますから、「先に言ったのはうちなので、うちに回してください」とか「売却代金をあと10万円上乗せするから、うちと契約してください」といった形で、最後の交渉のところでこじれるケースも結構あるようです。
例えば、年に1・2回不動産売買をしているような方なら一般媒介でも問題ないと思うんですが、人生で1・2回しか不動産を売らないという方は、専任媒介か専属専任媒介で不動産会社を1社に決めて任せた方が負担が少なくて済むでしょう。
また、当社でデータを集計してみると、専任媒介と一般媒介では成約率が10倍も違うんです。専任媒介の方が圧倒的に成約率が高い。なぜかというと、営業活動にはかなりのコストがかかるんですよ。営業担当者の人件費もかかるし、成果を出さないといけない。だから、専任媒介でないと本腰を入れて動けないというのが実情なんです。
おすすめの媒介契約の締結の進め方としては、まず金額を決めるときに、その金額の根拠をしっかり確認することが大切です。それと同時に、その金額でどういう営業手法を取っていくのか、その先の展開についても不動産会社としっかり話し合っておくべきです。
例えば、見込み客に直接アプローチしていくのか、レインズ(不動産業者間の物件情報交換サイト)やポータルサイトに掲載して申し込みを募るのか、営業手法は色々あるんです。これらの提案があるかないかは非常に重要で、必ず確認した方がいいポイントです。
また、媒介契約を結ぶ際には、価格改定の計画も立てておくといいですね。最初は少し高めの価格で出してみて、2カ月目にはここまで下げてみようとか、そういった具体的な戦略を立てて置きましょう。
媒介契約したからといって、その会社で必ず売らなければいけないわけではありません。3カ月間任せてみても結果が出なかった場合は、他の会社に依頼を変更することもアリだと思います。結局は成功報酬型の契約なので、結果を出せなかった会社を変更するのは当然の判断でしょう。
代表取締役伊藤幸弘
媒介契約があることで、不動産会社は正式に売却活動ができるようになります。
媒介契約を締結する際、売主は媒介契約書の金額、期間について必ず確認するようにしてください。というのも、残念ながら悪質な業者の中には、口頭では2,000万円で売却すると言っておきながら、実際の契約書には1,900万円と記載してあるようなケースもあるんです。
最近は電子契約も増えてきていますから、データをしっかり読んで内容を確認する必要があります。それと同時に、契約書類はちゃんと保管しておくことも重要です。「サインしたけど、どこにしまったか分からない」「データが見つからない」となると、どんな契約を結んだのか分からなくなってしまいますからね。これは売主にとって非常にリスクの高い状況になってしまいます。